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劇団桟敷童子『オバケの太陽』を観た

今年の5〜6月は、残念なことに水族館劇場による公演が無い。とくにここ2,3年、この時期になると水族館劇場の公演に数回は足を運んできたこともあって、炸裂する舞台を観ないままでいると、なんだかもの足りない。
そこで(というわけでもないけど)、案内が送られてきたこともあって、劇団桟敷童子の新作公演に行くことにした。

先週の23日(木)、会場のある「すみだパークスタジオ」へ。ここには倉庫を改装した舞台があって、以前もこの会場で桟敷童子の舞台を観たことがある。錦糸町から徒歩15分、最寄りの東武伊勢崎線の業平橋駅からも徒歩12分と、アクセスが微妙に悪いのだが、そんな場所であっても、開始時刻になると平日でも座席ほぼ満席。

そういえば、前にはなかった風景でやたらと目立っているのが、東京スカイツリー。お膝元といっていい場所なので、しかたがないのだけど、どこにいてもその巨大な建造物がいやでも目に入ってくる。この日も、公演会場の入口から振りむくと、そのバカ高い建物が…。
東京はもちろん、日本でも有数のランドマークなのだろうけど、ニョッキリいきなりそびえ立っているところが、この場所にはどうにもなじまない気がする。これからこの界隈の風景として、違和感なく溶け込んでいくまで、どれくらいの時間かかるのだろうか。

それで、桟敷童子である。
今回は新作『オバケの太陽』の公演。この時点で、週末までの全公演はSold outだったとか。
劇団のサイト http://www8.plala.or.jp/s-douji/ に、今回の公演のポスターなどがあるものの、中身はどういうものなのか、ハッキリ言ってほとんど分からない。会場に入ると、舞台の前面と周囲にひまわりの花がこれでもかと咲き乱れ、炭鉱の労働組合とおぼしきストの檄文が書かれた板張りがあちこちにあり、「夏の話しで、舞台は炭鉱の町か」というのが分かるくらい。

九州(筑豊?)の炭鉱町。かつては多くの炭鉱労働者が行き交い、にぎわった町も、石油へのエネルギー転換のあおりで活気がなくなり、かつて鉄道が敷かれて走っていた蒸気機関車も、いまや記憶の中にしかない。その町で工務店を営む一家と地元の仲間たちが、とあるきっかけで炭鉱事故の孤児(範一)をひと夏の間だけ預かることに。なかなか心を開かない範一だったが、かつての戦災孤児であり、いまは工務店に雇われている主人公(ハジメ)にだけは不思議となついた。さまざまなことが起こり、やがて夏が過ぎていく…。

中盤以降、舞台を観ながら頭の中に思い起こされてくるのは、今回の震災での原発事故からはじまる経緯。舞台で描かれるのは炭鉱の町の出来事なので、「原発」も「福島」も、当然ながらこれっぽっちも出てこない。まったく出てはこないけど、繰り返しよぎるのは福島での原発事故のことだ。「かつてのエネルギー政策の転換で大きな影響を被った地域で起こったことが、いまもまた繰り返されようとしている」とでも言えばいいか。もちろん、こんなハッキリとしたメッセージがあるわけではないんだけど。

そんなことを思い起こさせつつも、終盤ではいつもの桟敷童子らしくビックリの大仕掛けがあり、そして泣かさせる。大量の紙吹雪が舞うなか、範一とハジメが別れていくシーンは、いやぁ泣けて泣けて…。

でもこうやって感想を書いてくると、このラストシーンと『オバケの太陽』というタイトルについては、いろいろな意味があるかも、と考えさせられる。もう一度観られないのが残念。
by t-mkM | 2011-06-28 01:09 | Trackback | Comments(0)


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