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『冷たい熱帯魚』を観た

先日、新聞を見ていて、園子温監督の『ヒミズ』で主役を演じたふたりの俳優が、ベネチア国際映画祭で新人賞を受賞したことを知った。園監督の映画が注目されるキッカケって、いつも海外の映画祭のような。
園子温の映画といえば、いくつかの作品はDVDで見たものの、何といっても『愛のむきだし』である。4時間の長尺をダレルことなく、過剰ともいえるハイテンションで描ききったインパクトは、ちょっとほかには見当たらない。

その園子温監督の、『愛のむきだし』につづく作品が『冷たい熱帯魚』。
今年1月から劇場ロードショーされていたけど、結局観に行くことができずにいたので、先日、ツタヤで新作DVDとして借りて、観てみた。
以下はアマゾンのスト—リー紹介から。

小さな熱帯魚店を経営する社本と妻の妙子は、娘の美津子が万引きしたと連絡を受け、スーパーへ向かう。そこで警察への通報をされそうになったとき、同じく熱帯魚店を経営する村田幸雄の介入でお咎めなしに。社本よりはるかに大きい店構えを持つ村田は、若い女の子を全寮制の寮付きで雇っており、美津子もそこで面倒を見ても良いと申し出る。再婚相手の妙子と美津子の不仲に悩んでいた社本はその申し出を受ける。完全に村田のペースに乗せられた社本夫婦は、熱帯魚の養殖ビジネスに協力する事になるが、どんどん深みにはまっていく・・・。

…...。
見終わった直後は、出てくる言葉もない感じ。

埼玉で起きた愛犬家連続殺人事件にインスパイアされたという、この作品。冒頭からなんだか不穏な空気が漂いながら始まる。中盤、でんでん演じる村田が社本の前でいきなりその本性をあらわしてからは、エロ・グロ、そして暴力の場面が交互にくりかえされ、その描写に圧倒されてストーリー展開は予測もつかない。そういう描写に反してというか、だからこそというのか、バックでくり返し流れるのはマーラーの交響曲第1番「巨人」の第3楽章。前作『愛のむきだし』でもベートーベンの交響曲やゆらゆら帝国の楽曲が印象的に使われていたけど、この作品でもバックで静かに流れるマーラーは、画面の過激さとのコントラストもあって、ひときわ耳に残る。そしてラスト、いろいろと議論をよびそうなシーンで流れてくるのは、スケーターズ・ワルツ。園監督がつかう音楽のセンスには、いつも驚かされる。

アマゾンでは、
<『愛のむきだし』を超える、園子温の手加減なしの猛毒エンターテインメント>
というコピーが踊っていたけど、まさしくその通り!と言える内容。

で、翌日、せっかく借りてきた新作DVDなので2回目を観た。
最初に観たとき、「ここはなんでこうなの?」と、細かいところでいろいろとツッコミを入れたくなる場面が少なくなかった。とはいえ、エロスと暴力、そしてくり返し出てくるグロい描写がともかく強烈で、押し切られたという感じだった。
それでも2回目となると、そういうグロいシーンも一転して、どこかギャグのように思えてくるから不思議だ。この映画の感想をネットでみると、わりと「コメディー」という評価を目にしたけど、それもうなずける。また、あちこちで目についたツッコミどころも、2回目に観たときにはそれほどの違和感を覚えなかった。それよりも、映画のストーリー自体がもっているインパクトが、より直接的に響いてくるように感じられたのだった。これはつまり、脚本そのものがよく練られているということではないか。

この映画を評して、「おもしろい」とか「すばらしい」といったコトバは向いていないように思うのだが、ただまちがいなく重量級の快作・怪作であることはたしか。
そもそもR18指定だし、けっして幅広くオススメできる映画ではないだろうけど、この映画を観た人とは、ぜひいろいろと語ってみたくなる、そんな作品ではある。


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by t-mkM | 2011-09-16 01:06 | Trackback(1) | Comments(0)
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