福田和代のクライシス・ノベル

たまたま手にした『TOKYO BLACKOUT』(創元推理文庫)がけっこう面白かったので、これを機会にと、福田和代の小説をつづけて読んだ。



まずは、『オーディンの鴉』(朝日新聞出版)。

インターネットの闇、というよりも、いまや生活の隅々にまでネットワークが張りめぐらされている現代社会の暗部を、「元SE」という経歴を生かして?変わった角度から突っ込んで展開させたクライム・ノベル。


それから、『タワーリング』(新潮社)。

小説では名前こそちがっているけど、誰もがそれと分かる六本木の森タワー(そもそも表紙が森タワーそっくりだし)を舞台にくり広げられる、こちらもスケール大きなクライシス・ノベルで、ちょっぴり昭和の残り香もする。

どれも面白く読んだけど、個人的な好みで言うと、『オーディンの鴉』、『TOKYO BLACKOUT』、『タワーリング』の順か。


どの小説も、現代テクノロジーの最先端を題材とし、綿密な取材を経て書かれていることがよく分かる。また、そうした周到な取材のうえにたって、元SEという経歴が生かされているのか、絶妙で独特なイマジネーションがまぶされてストーリーが展開している。
ただ3冊つづけて読んで共通して感じたことは、犯人側の「犯罪を犯してまでこれをやるんだ!」という動機が、読み手の側に説得力をもって迫ってこないという点。とはいえ、この3冊で犯人の背景となっているエピソードに関しては、それなりに分かると言えば分かるのだけど、それにしてもこれほどの犯罪をやっちゃうもんなの? と。
いままでにないスケールの大きな舞台とか、登場する人物もひとクセある味のあるキャラクターが多いなど、新鮮な読みどころがある。それだけに、犯人側の動機が弱いように感じられてしまうのが、ちょっと残念。

それとも、ここは見方を変えて、そういう万人(つまり読み手側)にはあまり受けないような個人的で特殊な動機であっても、大それた犯罪に向けて突っ走るということそれ自体が、"いまどき"なのだろうか…。
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by t-mkM | 2012-03-16 01:30 | Trackback | Comments(0)
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