寄せ場のいま ー 『釜ヶ崎のススメ』という本

どういったキッカケでこの本を手にしようと思ったのか、もはやサッパリ覚えていないのだが、近所の図書館にリクエストしたらほどなく届いたので、読んでみた。

 『釜ヶ崎のススメ』原口剛・稲田七海・白波瀬達也・平川隆啓 編著(洛北出版)


釜ヶ崎とは、大阪市のほぼ真ん中、なんばより少し南に位置するいわゆる"寄せ場"の名称である。ところが現在では「釜ヶ崎」という地名は存在しない。しかも、マスコミではその辺りのことを「あいりん」と呼んでいたりする…。
本書は、そんな釜ヶ崎の地名の来歴からはじまり、建設日雇い労働者の体験ルポ、釜ヶ崎の住まい=簡易宿泊所(ドヤ)のこと、高度成長からバブル経済へと至るまちの移り変わり、釜ヶ崎暴動とその内実などなど、さまざまな切り口で釜ヶ崎という場所やその歴史、そこへ集まってくる人々・団体までをカバーしていて、もりだくさんで読みごたえ十分。

編者でもある原口さんは、第7章「騒乱のまち、釜ヶ崎」の冒頭でこんなことを書いている。

…これまで不安定労働や貧困といえば、釜ヶ崎のような特定地域だけが抱える問題だったのだが、いまではひろく一般社会にみられるようになったのだ。だから、これらの問題は「釜ヶ崎の全国化」や「社会の総寄せ場化」と呼ばれたりもする。

おなじく編者の一人である白波瀬さんは、第9章「釜ヶ崎の「生きづらさ」と宗教」の最後を次のようなことばで締めくくっている。

 社会関係が脆弱であり、高齢化にともなって死が差し迫った(元)ホームレスにとって、宗教は身近な存在となっている。釜ヶ崎で活動している宗教者・宗教組織は、現在の人間関係はもちろん、目に見えない存在(死者や神仏)をも含み込んだ関係性を調整し、無縁化しがちな(元)ホームレスの縁の結び直しに深く関与している。日雇い労働の寄せ場としての機能が停滞してからの釜ヶ崎は、「宗教の寄せ場」となっている。

かつては暴動で知られた釜ヶ崎であるけど、いまやこの本で書かれているようなコトは釜ヶ崎だけにとどまらない。見ないふりをしていても、避けていようと思っても、あちこちでフツーに「釜ヶ崎」的なるものを目にするし、耳にもする。
その意味で、この本が編まれた意義は小さくない、と思う。
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by t-mkM | 2012-07-13 00:33 | Trackback | Comments(0)
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