19日(水)の夜、仕事を終えて、夕飯をかっこみ、ひさしぶりに「ポレポレ東中野」へと向かう。以前のエントリにも書いたけど、曲馬館のドキュメンタリー映画を観るためだ。
『風ッ喰らい時逆しま』 布川徹郎(布川プロダクション作品)1979年/日本語/88分 http://www.cinematrix.jp/dds2012/program/wind/ レイトショーで21時からの上映。 15分くらい前に着いたら、「間に合いましたね」とウロウロ・ヤマダさんから声をかけられる。おぉ、やっぱり来てましたか、いやーさすが。 着席して客席を見わたす。どれくらい入っているだろう? 30人ほどか。平日のレイトショー、一日だけの上映、などを思えばけっこうなお客さんの数ではなかろうか。 映画はというと、上のリンク先にある <伝説の芝居集団・曲馬館は「地獄の天使たち」をひっさげ山谷、釜ヶ崎、沖縄コザ、網走、横浜寿町など日本列島を疾走し公演の旅を続ける。> というそっけない説明のとおり。 テント舞台の道具を積んだトラックが移動していく冒頭のシーンから始まって、役者が舞台でセリフを絶叫する場面や、移動先でテント舞台を作りあげていくところ、沖縄の街や田舎道を疾走するシーンや繁華街でのゲリラ宣伝で警官と衝突する場面やらが、ナレーションや字幕による説明などいっさい無く、次々と映し出されていく。そういったなかに、沖縄の米軍基地やジェット戦闘機のショット、ひめゆりの塔へ慰霊に訪れる一団やガイドによる慰霊碑の説明シーン、昭和天皇の写真やマンガ?などが挟みこまれたり、舞台のシーンと二重写しになったりする。ちょっと実験的な映像手法。でもまあ、おかげでナレーションが入らずとも、その主張するところは伝わってくるが。 そんな感じの映画なので、記録映像を使ってはいるものの、フツーに言う「ドキュメンタリー」とはずいぶん異なる。まったく違う映像作品、と言ってもいい。 それにしても、ウワサには聞いていたけど過激な劇団である。 女優は胸を(いつも?)はだけるし、お客さんがすぐそこにいるのに舞台へ火を放って燃やしちゃうし、二人乗りになったバイク数台で舞台に押し入る、横倒しになったクルマを次々と炎上させる、プロレスの即席リングを作り、役者に向かってホントにドロップキックをする、などなど…。 今となっては、いや当時でさえもヤバイと思われるような場面があちこちに。 また説明がいっさい無いぶん、バックに流れる歌や舞台で使われている曲、曲馬館に集う劇団員の容貌や服装、街の様子などから、かえって70年代半ばの空気感がよりストレートに伝わってくるかの印象を受けた。 (ちなみに、バックに流れていた歌や曲はどれもよかった。ググると曲馬館が自主制作した音源はCD復刻されているらしいので、ぜひ手に入れて聴いてみたい) ただ、フィルムの劣化はいかんともしがたく、わりと良好な状態の音響に比べ、映像の不鮮明さが目についたのは残念。願わくば、デジタル・リマスターしたものを改めてじっくり観てみたいよなぁ。難しいだろうけど…。 なお冒頭に流れるクレジットによると、制作は平岡正明。また曲馬館のメンバーとして「野崎六助」の名も。推理小説の評論などを読んだことがあるけど、ここで名前を見るとは。 ハッキリとは分からなかったけど、桃山さんとおぼしき人や千代次さんかなと思われる方もチラチラと。 ここに収められた曲馬館の舞台を観ていると、「いまの水族館劇場の源流はここにあるのか」と思わせる要素が多くあって興味深い。加えて言えば、唐十郎のテント芝居からの影響も明らかだな。 終わりぎわ、画面を見ながら「ここに出ている劇団員たち、いま頃どうしてるのか?」なんて思っていると、終映直後、ワタクシの前と横に座っていた方々がどうやら劇団の関係者だったらしく、「よぉ、やっぱり来てたね」「うん、芝居の内容は覚えてるもんだねぇ」などと会話を始めたのには、ちょっとビックリ。
by t-mkM
| 2012-09-21 01:22
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