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ジャズ度の高い連作ミステリ

先日、よく行く近所の図書館ではなくて、ちょっと遠出をして別の図書館に足をのばし、こんな文庫が目についたので借りてみた。

『落下する緑』田中啓文(創元推理文庫、2008)

唐島英治クインテットのメンバー、永見緋太郎は天才肌のテナーサックス奏者。音楽以外の物事にはあまり興味を持たない永見だが、ひとたび事件や謎に遭遇すると、楽器を奏でるように軽やかに解決してみせる。逆さまに展示された絵画の謎、師から弟子へ連綿と受け継がれたクラリネットの秘密など、永見が披露する名推理の数々。鮎川哲也も絶賛した表題作にはじまる、日常の謎連作集。

まあ、つまりは上のような内容紹介を目にして、「ジャズ・ミュージシャンが探偵役のミステリ?」と思って借りてみたわけだけど、これがアタリで、思いがけなく(なんて言うのは著者には失礼だけど)面白かった。


著者の田中啓文(「けいぶん」かと思っていたら「ひろふみ」とのこと)という名前は以前から知ってはいたものの、どことなく”バカミスの書き手”(すいません)っぽいイメージがあって、これまで手が伸びなかった。
そんなこともあって、「じゃあ、試しに」と借りてきたわけ。

サブタイトルには「永見緋太郎の事件簿」とある。
バンマスであるトランペットの唐島を語り手に、彼のバンドまわりで起こるさまざまな謎やトラブルを、テナーサックスの永見が解決に導いていく、という連作ミステリ。
なんといっても探偵役である永見のキャラクターが秀逸。若い天才肌のプレイヤー、ジャスのことしか興味がないわりには、業界の大物さえ知らない、じゃあカタブツかというと、そんなこともなくさばけて素直な性格…。この永見が、TPO構わずミもフタも無く披露してしまう、常識や偏見にとらわれないロジカルな推理が冴えている。
著者自身、ビッグバンドでテナーサックスを吹くという、かなりのジャズ愛好家。だからこそなのか、作中でのミュージシャンどおしの会話など、レコードに詳しいだけのジャズファンではここまで書けないよなぁ、と思わせるくらい。

各短篇の終わりには、”こんなレコードを思い浮かべながら書いた”というアルバム紹介コラムがあって、取りあげられているレコード(CD)が、マニアックながらも聴いてみたくなるものばかり。
ジャズを聴かない人でもそれなりに、ジャズをよく聴く人ならばさらに楽しめることうけあい、の連作ミステリ。

  ↓今週いっぱいやってます。ぜひご来場ください!

「下町ハイファイ古本市」 
  期間:2013年8月3日(土)〜 9月8日(日) ←会期延長です!
  会場:ダウンタウンレコード(東京都江東区東陽3-27-3)
  http://www.downtownrecords.jp/
  アクセス:地下鉄東西線「東陽町駅」1番出口より徒歩3分
  開店時間:13時~20時(定休日:毎週火曜・水曜)

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by t-mkM | 2013-09-03 00:54 | Trackback | Comments(2)
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Commented by NEGI at 2013-09-24 14:48 x
このシリーズ面白いですよね。ミステリ的には、話によって当たり外れが大きいですが。著者のフリージャズガイドが新書で出ていて、これもなかなかいいです。フリージャズ聴いてみようかなという気になります。
Commented by t-mkM at 2013-09-25 18:23
NEGIさん、ごぶさたしています。すでに読まれているとは、さすが。
この本をきっかけに著者の他の小説も読みましたが、落語あり、時代ものありと、間口が広いというか懐深いというか、ウマイですよね。
最近では、大阪の粉モンをネタにした『こなもん屋うま子』で笑わせてもらいました。


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