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維新派「MAREBITO」@犬島 観劇旅行

さる三連休の12日(土)、維新派の新作野外公演「MAREBITO」を観るべく、岡山県の小さな離島である犬島へ行ってきた。
維新派の犬島での公演は、3年前の夏に観た「台湾の、灰色の牛が背伸びをしたとき」以来だ。

維新派公式サイト →http://www.ishinha.com/

早朝の新幹線に乗ってきたおかげで、昼前には岡山駅へ着き、ホテルに荷物を置くことができた。ちょうどいい時分なので、K(かんから)が探し出した店へと歩いて、昼食に。野菜と雑穀・豆類によるランチ。人気店らしく混んでいたけど、すんなり入れてなかなかウマかった。

午後1時半過ぎに集合場所である駐車場へ。3年前もご一緒したM夫妻らと合流。10月半ばとは思えない陽気で、手続きを済ませる間にも汗が流れてくる。何台もある維新派の観客送迎用のバスに乗り、2時過ぎに出発。45分ほど揺られて、宝伝港という小さな港に到着し、船を待つ。やはりこれも維新派の観客送迎用の船に乗って、こちらは10分ほどで犬島へ到着。3年前よりも観客が増えたためなのか、集合場所から犬島到着までに待ち時間もあって時間がかかり、公演場所の海水浴場(犬島港のちょうど反対側)へ着いたのは4時近かったか。

維新派ではおなじみの屋台村で缶ビールなどあれこれと買い込み、持ち込んだワイン、焼酎などとともに数名で宴会。途中、宴会の賑やかさに引かれて?か、長年の維新派ファンだという見ず知らずの人も加わり、過去の公演の感想などで盛り上がる。

5時に開場、客席への誘導が始まる。客席に行ってみると、ネットで早々にチケット予約をしたおかげか、かなり上の方でほぼ真ん中あたりの座席。(フツーの演劇の場合、役者の表情も見える前方が”よい席”なのであろうが、維新派では舞台全体が見渡せる座席がすなわち”よい席”なんだと思われる)
客席はかなりの横幅があり、階段状で10段くらい、500名ほどの座席はあろうかという規模。舞台両脇には照明と音響機器が組み上げられ、客席正面の舞台はびっしりと木板が張りめぐらされていて、その奥には海水浴場の一部なのか、コンクリートの細長い道が円弧状に延びている。

夕日が沈もうかという5時半きっかりに、これといったアナウンスもなく、静かに開演。白い、教室を思わせるようなイスが点々と置かれた舞台に、白塗りの役者が登場し、イスの周りで統制のとれた動きをしていく…。
これといったストーリーはとくにない。総勢20名ほどの役者がいるものの、ほぼ全員が同じ白塗り、白い服。冒頭のような、調和のとれたアブストラクトなシーンが脈絡無さそうに、時にはありそうに、次々とあらわれていく。
それでも舞台が進んでいくと、「そこはどこですか?」という問いかけが繰り返し発せられ、現在と過去とを行ったり来たりしながら、ある場所(島か)や出来事、人物が浮かび上がったりもする。それらをふり返れば、アジア、離島、漂流、海といったキーワードでつなげられる舞台か? とも思えてくる。でもまあ、そういう”解釈”は不要なんだろうな、きっと。

今回印象的だったのは、物語のわりと早い段階で、役者たちの足下を水(海水だろう)が左から右へヒタヒタと流れて舞台を満たしていくシーン。
”満たしていく”といっても、舞台に水が数センチ溜まる程度だけど、役者は相変わらずそこで動くため、当然バシャバシャと水しぶきが飛び、水面が揺らめく。そこに照明があたるので、舞台全体はさらに幻想的になったりして、表情が増す。
加えて、夜空を見上げれば、ちょうど舞台の真上、半月が登っていてきれいに輝き、照明が落ちると月明かりを海に落としている。
海をバックした舞台、その上で月が輝いている、それだけでもスバラシかったな。

それからもうひとつ。
物語の後半で、いきなり役者どうし殴り合うシーンが出てくるのには驚いた。役者全員が、(統制が取れながらも)あちこちで組んずほぐれつ、水の充ちた舞台の上で殴り合うのだ。わりに長くつづいたか。こういう”暴力”と維新派とは遠いようなイメージがあったけど、はからずも”いま”を強く感じさせられるシーンだった。

今回の「MAREBITO」、印象的なシーンがいくつもあって、内橋和久さんの音楽もこれまでになく即興的な部分が多く、また観たいと思わされた2時間だった。
…しかし、海風が思いのほか強烈で、上着を持ってこなかったこともあり、後半は寒くてふるえていた。

なので、終演後はともかく暖まろうと熱燗を出す屋台へ。するとそこに、維新派を主宰する松本雄吉さんが飲んでいたので、ご一緒させていただいた。
もちろん、話しはいま観終わったばかりの「MAREBITO」。こちらの感想や問いかけに対し、ざっくばらんに、かつ縦横に答えてくださる。そのうち、音楽を担当された内橋さんも加わって、今回の演奏やら本来?の即興演奏のこと等々、いやもう思いがけず充実した”アフター・アワーズ”となったのであった。
(つづく、かも)
by t-mkM | 2013-10-18 01:15 | Trackback | Comments(0)


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