過日、諸処の事情によりひさしぶりに平日に休暇を取った。
午前中に用事をこなし、昼飯時となったころあい、「さてどうすっかな?」とつらつら思案。フト、”町の大衆食堂にでも行ってビール飲みながらゆっくり昼飯”、という案を思いつく。ウン、いいんじゃないの。 じゃ、どこへ行くか? まあ、あんまり遠くなく、でも最近行ってない場所に、ということで、巣鴨の地蔵通り商店街にある「ときわ食堂」に決める。 地下鉄を巣鴨駅で降り、地上へと上がっていくエスカレーターに乗っていると、上から降りてくるオバサン(オバアサンか)数人と続けざまにすれ違う。いやまあ「オバアチャンの原宿」に近づいてきたなー、という感じである。 平日の昼間に地蔵通り商店街を歩くなんて、じつは今回が初めてかも。 道行く人々、というか、通りを歩かずに店先でたむろしている人々は、たしかに年配の女性の団体?が多く目につく。とはいえ、それ以外、熟年夫婦、家族連れ、スーツの人も交じり、平日の日中だというのに通りは買い物客(かどうかは不明であるにしても、たくさんのお客)でにぎわっている。個々の商店レベルでは、それほど売れていないかもしれないけど、景気は上向きなのか、これだけの人を集める地蔵通りは大したもんである。 しばらく通りを行くと、左手の店先にちょっとした行列ができている。「えっ!?」と思って見れば、そこが「ときわ食堂」。 時刻は午後1時ちょっと過ぎ、という時間帯によるのか、けっこう広い店なのにこんなに混んでいるとは予想外。いや驚いた。 待っている間にも、年配のご夫婦などがうしろに並んできて、何を食べようか相談をはじめている。「ミックスフライかな?」「さっき大福食べてるし…」「カキフライもとるか」「そんなに食べられないでしょ」「銀むつもいいな」「…」、などというやりとりがあれば、「メニューありすぎて、並んでいる時間じゃないとゆっくり考えられないわね」と言う声も。なるほど、行列するのはメニューを思案するための時間なのか。 一人だったので、ほどなくして席に案内される。 まずビール(大瓶だけどスーパードライなのがやや残念)、そしてアジフライに本日の煮物3種盛り合わせを頼む。途中、気になっていたカキフライも1個だけ追加(そういう細かい注文もできるのだ)。定員さんはみんな若いけど、年配者の接客には慣れている様子で、お客の(時にはトンチンカンな)問いかけにもにこやかに優しく応対している。 注文した品は、揚げたてであったりして、どれもフツーにウマイ。とりたてて何がどう、ということはないけど、過不足なく基本を満たしているとでもいうか。大衆食堂の王道?を行く感じである。しめて1300円。いやぁ満足。 ときわ食堂を出て、巣鴨駅の界隈をふらふら歩きながら、「そういえばこのあたりに古本屋があったっけ」と思い出す。白山通りを千石駅の方面へと向かっていくと、はたしてその古本屋が。 店頭には100円、200円の棚のほか「4冊100円」の文庫の棚もあったので、あれこれと眺めて数冊購入。 …その晩、千石の古本屋で買ってきた中から、 『ヤッさん』原宏一(双葉文庫) を読みはじめる。以下、アマゾンの内容紹介から。
まったくノーマークの作家さんだったけど、この内容紹介をながめて読んでみようかと思ったわけ。 昨年出た文庫で、しかも版を重ねている。 物事がトントン拍子に運び過ぎる感じに加え、登場人物の描写がちょっと平板な気がするものの、それはそれとして、飲食店と食材、食の流通やマスコミなどに関わるディテールを生かしたストーリーがなかなか読ませる。 実在する飲食店やホテルを連想させる固有名詞をちりばめつつ、飲食店の経営センスの是非やマスコミに載るグルメ記事の裏側、それに築地市場の移転問題まで、実際にある(ありそうな)トラブルを題材に、ヤッさんとタカオが解決(仲裁)に乗り出す…。 ”誇り高きホームレス”であるヤッさんから発せられるセリフは、フツーに生活しているような者にとってもなかなか考えさせられる。 昨年に出た本だけど、じつはけっこう旬な小説であるかも。
by t-mkM
| 2013-11-27 01:21
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