またも前回エントリのつづき。
エントリを書いた勢いもあって、K(かんから)が図書館から借りてきていた『さよなら妖精』をひさしぶりに再読した。 さすがにはじめて読んだ時の鮮烈な印象にはおよばないものの、そして結末が分かってはいても、それでも十分に面白く読んだ。先のエントリでは、<地方都市でくすぶる若者たちによる”青春小説”といった趣き>なんて書いたけど、いやいやどうして、当時(本書の時代設定は1991〜92年)の高校生くらいの我を張る感じや、ユーゴから来た少女マーヤをめぐってギクシャクしがちなやりとりなども、脱線する会話のネタもふくめ吸引力があって読ませる。まあ、登場人物が高校生にしては(かなり)聡明なのはご愛敬か。 もはや忘れていたけど、再読していてちょっと面白いなと感じたのは、マーヤの送別会の場面。 送別会なんだから当然!、といった感じで日本酒が出てくるし、またその酒を登場人物みんながガバガバ飲むし。まあ”酔っぱらって通常とは異なるモード”にもっていくためかとは思うけど、高校生が主人公だと最近の小説では見ないシーンでは? それから、高校生にして自分の名前、姓・名の由来をきちんと語れること。名前だけなら両親から聞かせられることはよくあるだろうけど、自分の名字についてまでその来歴を詳しく人に話せるというのは、なかなかのものではないか。ワタクシはと言えば、ちょっと自信はないなぁ。 そして結末。 この著者・米澤穂信は他の小説でもそうなんだけど、ハッピーエンドからは遠い、けっこうビターなラストになっているものが多い(と思う、全部は読んでいないので)。この『さよなら妖精』も、ちょっと唐突な感はあるものの、かなり苦い結末ではある。 それにしても、男というのは鈍感なんだよなぁ、とつくづく思わされた。 本書を再読してみると、やはり「旧ユーゴスラビアの国々はいま、どうなっているのか」が気になってくる。 ググってみれば、連邦を構成していた6つの国、スロベニア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、モンテネグロ、マケドニアは、すでにそれぞれ共和国として独立し、それなりの年月が過ぎている。とはいえ、泥沼と化した独立戦争があり、民族浄化という凄惨なことまで行われたわけだから、それぞれの国や民族の間でのわだかまりがすべて解消されたわけではないだろう。 ふりかえって足下を見ても、中国や韓国との関係ではいまだにあれこれ問題が噴出するのだから、紛争・独立から10年や20年では言わずもがな。ただ昨今、この辺りのニュースをあまり見聞きしないので、現状はよく分からないけど。 ま、ちょっと気になる地域ではある。
by t-mkM
| 2014-01-24 01:08
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