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CCCによる公立図書館のいま

図書館にまつわるネタで、興味深い記事を見つけたので、以下に孫引き。

「武雄市図書館視察レポート -厳しい見方も」
http://johokanri.jp/stiupdates/library/2014/01/009537.html

もとになっているのは神奈川新聞の2日にわたる記事。
武雄市図書館といえば、TSUTAYAを展開する「カルチャア・コンビニエンス・クラブ(CCC)」によって運営委託された初のケースとして話題になったけど、神奈川県では海老名市が同様の形で市立図書館を運営するようだ。また神奈川県では厳しい財政事情もあってか、同県の教育委員会が「県立図書館の閲覧・貸し出しサービス廃止」を打ち出していて、そんな背景もあっての上の取材記事なのかもしれない。

詳しくは記事にゆずるけど、武雄市図書館の利用者が3倍になり、貸し出し冊数も増えて、利用者の大半も満足しているという実績の一方で、たしかに識者などによる厳しい指摘もなされている。
たとえば、

 「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」「フランダースの犬」「三国志」「西遊記」といった子ども向けの本が、大人の背丈よりも高い位置に並び、傍らには「係員に声をかけて」の表示が。子どもは一人で好きな本を選ぶこともできない。

この状況に対して、”実質的に「閉架」といえる”なんて書かれているけど、そりゃそうだろう。目の前にあるのに手が届かないなんて、子どもにとってはなかなか残酷ともいえるのでは。
また、そもそも図書館とみることができるのか?、という点では、

 「率直に言って、公設民営のブックカフェだと思う」と指摘するのは、慶応大の糸賀雅児教授(図書館情報学)だ。昨年10月末に横浜で開かれた全国規模の見本市「図書館総合展」で発言した。

という見方も。
さらには、

 指定管理者制度に詳しい神奈川大の南学特任教授は「来館者が多ければそれで良いのか、ということが問われていない」と話す。3.2倍に増えた武雄の来館者数には、スタバやレンタル店だけの利用者も含まれているのだ。

といった指摘も書かれていて、”「評価軸」の欠如という日本の図書館全体の問題”ということにも触れている。

ふりかえれば、よく利用している近所の図書館も、区職員による業務から民間の指定管理者によるサービスへと全面的に変わってから、もうしばらく経つ。本を借りたり返却した際の、以前にはなかった「ありがとうございます」というリアクションにはいまだもって慣れないけれど。


この件に関連しては、最近の本だと『図書館に通う』宮田昇(みすず書房)が、一利用者の視点から感じたことをけっこう率直に書いていて、頷くところがあった。(ただ、この宮田氏は自身でも書いているように、長年にわたって出版界で仕事をされてきた方なので、フツーの”一利用者”とは言いかねる側面もあるとは思うが)
by t-mkM | 2014-01-28 01:36 | Trackback | Comments(0)


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