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最近の収穫

もう一週間経ったのか。

読みたいと思う本が手元になく、図書館からも借り出せていない。このところの猛暑とも相まって、どうにも本(とくに小説)を読もうという気になりづらい。
そんな中、「これは収穫だったよな」と感じたものを二つほど。

『九月、東京の路上で』加藤直樹(ころから、2014)


「1923年関東大震災 ジェノサイドの残響」というサブタイトルからも明らかなように、関東大震災をきっかけにはじまった朝鮮人に対する暴行や虐殺について書かれた本。東京・新大久保で生まれ育ったという著者が、”ヘイトスピーチ”と呼ばれるデモに対する抗議行動を続けるなかで、90年前に起こった朝鮮人への暴行・虐殺の歴史を調べ、ブログにつづったものをまとめたものだという。

まえがきで「本書の目的は、90年前の東京の路上でさまざまな人々が経験した現実を「感じる」ことである」と書かれているとおり、当時の新聞記事はもとより、萩原朔太郎はじめ様々な作家による回想、関連文献から当時の朝鮮人や日本人の書いた文章などが並べられ、しだいに当時が”感じられてくる”。
すべてを読んだわけではないけど、本を読んでいて「そうか」と思ったのは、朝鮮人に対する暴行・虐殺はいきなり発生したわけじゃなくて、何年も前からその下地は”準備”されていたんだなぁ、ということ。とくに1919年の三一独立運動と関連する新聞報道により、「朝鮮人は怖い」というイメージが定着したことが大きいらしい。

 様々なアイデンティティーをもつ人々が行きかう東京が、私は好きだ。しかし、そうした多様性を豊かさへと育てていくには、努力が必要なのだと思う。関東大震災時の虐殺を隠蔽せずに記憶しておくことは、その一部である。それは単に過去の話ではなく、人々の心に残った傷を修復し、未来に繰り返させないために必要なのだ。これこそ、最重要な「防災」のひとつだと私は考える。

上は、あとがきに書かれている文章だ。
あの「3.11」のときもデマが飛び交ったのは記憶に残っている。避難訓練や消火器の使い方だけではない「防災」についても、頭にとどめておかなければ、と思った。

もうひとつはCD。

『プレイグラウンド』山本精一(Pヴァイン・レコード、2010)


湯浅学が推薦の帯を書いているけど、まさにおっしゃるとおりというか、なんとも言えない独特で独自の歌詞に耳を持って行かれる。
ギター、ベース、ドラムというシンプルな構成。演奏もことさら盛り上がることもなく、淡々としていて、そんな演奏にのっかって、歌もしごく淡々と歌われていく。それだけなんだけど、その歌詞世界にひき込まれていく、というか。

この後、同じ曲目構成でアコースティック・バージョンも発売されているようなので、こちらも聴いてみたい。
by t-mkM | 2014-08-08 01:20 | Trackback | Comments(0)


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