1979年に公開されたフランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』。
(日本では80年公開) 当時、中学生かもう高校だったか、クラスでよくつるんでいた映画好きのヤツが「今度、すげぇ映画が公開されんだよ!」と盛り上がっていたこともあり、地元の映画館(いま思うと、やけにだだっ広い劇場だった)で観たのだった。 ドアーズの「The End」が流れるなか、爆撃でジャングルが焼き払われていく冒頭のシーンに始まり、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流しながら、10機ほどのヘリ編隊でベトナム人側の抵抗拠点を徹底的に爆撃していく場面などなど、最後まで画面に釘付けだったけれども、ラストでの観念的なセリフの数々をはじめ、10代半ばの身にはあきらかに消化不良でオーバードーズな映画ではあった。 しかし、「よく分かんねーけど、なんだかすげぇ」感は強烈で、後々まで鮮明に印象に残っており、それであるがゆえに、2001年に特別完全版が公開されたときにも、「こりゃ観ねばなるまい」と、もちろん劇場に行った。 それから時は流れて十数年、これといったきっかけはないけれど、ツタヤが恒例?のDVD100円レンタルだというので、あれこれ探して「戦争」コーナーに2本だけあった『地獄の黙示録(特別完全版)』を借りてきて、観てみた。 それにしても長い。なんと202分! さすがに途中でダレるんじゃないかと思ったけど、意外とそんなこともなく、3時間と少しを眠くもならずに観終えることができた。とはいえ、とくに特別完全版で加わったシーンには「まあ、無くてもいいかな」と感じた箇所もあったけど、総じて「よくもまあ、ここまで撮ったよなぁ」と感じられる場面の連続だと、あらためて再確認。 またすっかり忘れていたけど、特別完全版の後半にある、ベトナム奥地に入植して長らく生活しているフランス軍を訪ねるシーン。なんだか唐突に挿入されている感じもするのだが、このシーンでがあることで、ラストでの展開がいくらかは分かりやすくなっていた。(→米軍から失踪してジャングル奥地で王国を築いているカーツ大佐と、それを殺す命令を受けた主人公のウィラード大尉とのやりとり。これがまた何とも言えないのだが…) ただまあ、80年の映画公開当時にこの場面があっても、やっぱり若造には理解の助けにはなっていなかったろうとは思うけど。 観なおしてみて、つらつらと感じたのは、 ・米軍が、上級から下級の軍人に至るまでいかにぶっ壊れていたか(狂っていたか) ・前線に行くほど指揮官不在、つまり中心が無いのに戦闘だけが行なわれている →だからこそ、いまや米軍は無人機で空爆なのか? ・まあでも、戦争の現場って、いつでもどこでもこんなものなのかも ・とはいえ、米軍の将校のヤンキーぶりは始末に負えない ・ベトナム人に敬意を払っているはいるものの、ややアジア人蔑視の視線も ・ラストのシーンが、冒頭のシーンへと繋がっている、円環的な構成なんだな ・9.11以降、そしてイラク侵攻から”イスラム国”がらみでいろいろとあった現在の視点で観ると、いろいろと興味深い 等々。 観終わってからググってみると、「CinemaScape -映画批評空間-」というサイトに、『地獄の黙示録』の79年版と特別完全版(現題は「Redux」)とを比べながらいろいろと論じている記事があった。 http://cinema.intercritique.com/comment.cgi?u=1152&mid=395 何度観ても、何がしかの発見がありうる、そんな映画だと思うので、これを手がかりに読み解きをやってみるのも一興かも。
by t-mkM
| 2015-02-04 01:26
|
Trackback
|
Comments(0)
|
カテゴリ
以前の記事
2024年 12月 2024年 02月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 more... フォロー中のブログ
off note-blog- URGT-B(ウラゲツブログ) weekend books 昨日の続き モンガの西荻日記 往来座地下 新・クラシック音楽と本さ... ブックラバー宣言 ジャズ侍の無節操三昧 ブック・ダイバー(探求者... 鬼子母神通り みちくさ市 密林生活 jun... 古本万歩計 古書信天翁の日誌 一箱本送り隊 daily-sumus2 その他のリンク
古本T ←現在、閉鎖中
不忍ブックストリート しのばずくん便り okatakeの日記 内田樹の研究室 本日の写真(と最近読んだ本) 四谷書房日録 サイエンスライター 森山和道 橙日誌(甘夏書店) 木槿堂書店 麗文堂書店 やまねこ書店ーやまねこの日記 宇ち中 Kai-Wai 散策 古書ほうろうの日々録 文壇高円寺 ザ大衆食つまみぐい 吹ク風ト、流ルル水ト。 谷根千ウロウロ 「へのさん」の本でいっぷく ねこまくら通信 石英書房 放浪書房 市川糂汰堂 相互に旅をする人(羽鳥書店ブログ) わめぞblog 駄々猫舎☆活動記録 赤いドリルの夢は夜ひらく わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる 古本屋ツアー・イン・ジャパン 古書 西荻モンガ堂 東京古本市予定表 月刊『記録』 映画保存協会 渚だよりリコシェ波乗り営業日誌 出版・読書メモランダム 余白やの余談 水族館劇場 ニュース 雲のうえのしたで 火星の庭 港の人日記 かまくらブックフェスタ ブログ はやま一箱古本市 ricochet-odaihon ブックカーニバル in カマクラ 最新のコメント
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||