著者の本はいくつか読んできたけれど、この本はまずもってタイトルに興味を魅かれたので手に取ってみた。
『サバイバル宗教論』佐藤優(文春新書、2014)
以上はアマゾンにある内容紹介。つまりはお坊さんたちを相手に行なった講義の書籍化、である。 まず、著者のような人を呼んで話を聞いてみようという、この臨済宗・相国寺派という宗派が面白い。でも読んでみると、お坊さんたちとはいえ(というのも失礼なんだが)、現時点の世界情勢から他宗教のことまで、突っ込んだ質問をあれこれと繰り広げていて、その守備範囲の広さには恐れ入る。 構成としては、大きく4章からなっている。 第一講:キリスト教、イスラーム教、そして仏教 第二講:「救われる」とは何か 第三講:宗教から民族が見える 第四講:すべては死から始まる 両親の宗教的バックグラウンドからはじまって、全体としてはあんまり論理的な展開とはいえないものの、話題は古今東西あちこちへと広がる。興味深いエピソードが満載で、終始ひきつけられた。 ただ、参考文献など情報の出どころが明確にはされていないところが多々あるので、独自にトレースしようとするのは難しいかな。それでも、著者独特のロジックによる話の展開は説得的で、腑に落ちるところが多いのもたしか。 第一講の冒頭で、「一神教は不寛容で多神教は寛容」は本当か? とあってこんなことが書かれている。
その一方で多神教たる仏教はどうなのかというと、
この「相手の側の内在的な論理をつかむ」というのは、著者の本を読んでいると繰り返しでてくるフレーズである。それこそ、言うは易く行なうは難し、ではあるけども。 いろいろとメモしておきたいところがある本だったけど、いちばん印象に残ったのは、最後で言われている「中間団体こそ民主主義の砦」という部分かな。 モンテスキューの『法の精神』(岩波文庫で全3巻)、とりわけ下巻が重要だとして、民主主義を担保するのは個人の人権ではなくて中間団体だとモンテスキューは考えていた、と著者は言う。 では、中間団体とは何か。それがどう役割を果たすのか。
言われてみればフーンというくらいの主張なのかもしれないけれど、「中間団体こそ民主主義の砦」なんていうセリフは、この本で初めて見た気がする。 かなり偏った紹介になったけれども、興味深い本ではある。
by t-mkM
| 2015-02-17 00:45
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