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『後妻業』を読んだ

著者の直木賞受賞後の第一作であり、また実際に起こった事件との関連でも話題になっているこの本を読んでみた。


『後妻業』黒川博行(文藝春秋、2014)

以下はアマゾンの内容紹介から一部を引用。

「色で老人を喰う」裏稼業を描く戦慄の犯罪小説
妻に先立たれた後期高齢者の耕造は、六十九歳の小夜子と同居しはじめるが、夏の暑い日に脳梗塞で倒れ、一命を取り留めるも重体に陥る。
だか、裏で小夜子は結婚相談所を経営する前科持ちの男、柏木と結託していた。
病院へ駆けつけた、耕造の娘である尚子、朋美は、小夜子の本性を次第に知ることとなる――。
結婚相談所の男と、結婚したパートナーと、死別を繰り返す女につきまとう黒い疑惑。
恐るべき“後妻業”の手口と実態。
「黒川節」炸裂、欲に首までつかった人々が奔走する。犯罪小説の手練れが、身近に忍び寄る新たな「悪」を見事に炙り出す。

いやまあ、なんというか、エグい小説ではあるけれど、読み出すと止まらない。
実際の事件を予言した、などと言われているだけに、出てくる題材がリアルである。とりわけ、後妻となって正式に入籍せずとも、法定相続人(つまりは子供たち)の知らないところで、後妻である自らに有利なように公正証書を書かせてしまえば、それが絶大な法的威力を持つとは…。この「公正証書」にからむあれこれが、最後まで強烈に現実をちらつかせている。

著者の小説を読むのは初めてだけど、大阪弁で交わされる会話のやりとりの妙もあってか、最後までテンポよく展開していく。
そして、なんと言っても読ませるのは、登場人物のそれぞれのキャラクター。
”後妻業”に手を染める小夜子も、結婚相談所を経営して裏で小夜子を操る柏木も、彼らの手口を暴いていく探偵役となる本多も、誰も彼もが、ストーリーの中で語られていくどの人物の描写であってもリアルというのか、大阪のその辺で見ているかのような臨場感いっぱいである。

いかにもテレビドラマになりそうな内容ではあるけど、この小説の臨場感をドラマで出すのは難しいんじゃなかろうか。映像にはならない(できない)ところがある、読み終わるとそんなことを強く感じさせる小説。

ちなみに表紙の老人、写真なのかとおもいきや、よく見ると絵なのだ。「黒川」とあるので、書き手は奥さんかもしれない。
by t-mkM | 2015-02-27 01:19 | Trackback | Comments(0)


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