『イノセント・デイズ』を読んで

知人の女性が「泣いた!」と言っており、Kも読んだというので、それじゃあ、と手に取った。

『イノセント・デイズ』早見和真(新潮社、2014)

どこかで見た覚えのあるタイトルだと思ったら、今年の山本周五郎賞にノミネートされていた小説。ただし、受賞はしていない。(受賞作は柚木麻子『ナイルパーチの女子会』)
以下はアマゾンの内容紹介から引用。


「整形シンデレラ」とよばれた確定死刑囚、田中幸乃。その女が犯した最大の罪は、何だ? 殺されたのは三人だった。幸乃の元恋人だった男の妻とまだ一歳の双子の姉妹。なぜあの夜、火は放たれたのか? たったひとり、最後まで味方であり続けようとする男。なぜ彼は、幸乃を信じることができるのか? すべてを知らされたときあなたは、真実を受け入れることができるだろうか? 衝撃指数極大値。圧倒的長編。

…それにしてもスゴイ紹介文だな、これ。
ワタクシ的には初めて読む作家で、上の紹介文も知らずに読み始めた。

判決で裁判官が言いわたす判決理由の文句から取られた各章のタイトル、そのタイトルにそって幸乃の人物像や過去が語られていく。幸乃の裁判の傍聴人、幸乃の母親を看た産科医、義理の姉、中学時代の友人、元恋人の友人…、語り手がつぎつぎと移っていくごとに、マスコミが流すステロタイプな”極悪人の死刑囚”というイメージからは遠く隔たっていく。そうした全体の構成はなかなか新鮮ではある。

ただ、なんというか、確定死刑囚へといたる幸乃自身の行動に迫ってくるモノが足りないというのかなぁ。ページを繰らせる熱量は高いものの、小説の斬新な構成を生かすまでには、語られる”物語”の説得力が追いついていってない、とでも言うか…。もっとも大きいのは、死刑囚・幸乃の輪郭がいっこうにハッキリしてこない、というところか。(だから表紙カバーのイラストでは女性が手で顔を覆っているのか?)
またラストは、たしかに涙をさそう場面だとは思うし、以前に読んだ『教誨師』を思い起こさせるのだけど、ちょっとやりすぎな感も否めない気がしないでもない。

なお、先に触れた今年の山本周五郎賞の選評をまとめた下記のサイトによると、評者たちにはあまり評価されなかった様子。(詳しくは下記のサイトを参照ください)
http://homepage1.nifty.com/naokiaward/senpyoYS/senpyoYS28.htm
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by t-mkM | 2015-07-09 01:07 | Trackback | Comments(0)
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