古本屋で見かけてなんとなく手に取り、カバー裏のあらすじを読んで興味を覚えたので、ついでに購入。さっそく読んでみた。
『風少女』樋口有介(創元推理文庫、2007) 著者の小説はといえば、柚木草平シリーズのものを2、3冊読んだことがあるくらい。 この本はデビュー2作目、そして直木賞候補にもなったようで、法月綸太郎の解説を見ても、わりと評価が高い。 以下、アマゾンの内容紹介から。
小説は、からっ風吹きすさぶ冬の前橋から幕を開ける。90年に直木賞候補になっているところから、時代はおそらく80年代後半だろうか。 冒頭、主人公の幼馴染みである元不良(ヤンキーか)の話しぶりが、じつにリアルな”なまり”で、その独特なイントネーションまでをも含めて、声が聞こえてきそうな感じ。その辺りから個人的な興味も増して、引き込まれて読んだのだった。 で、まあ、その、なんというのか。 探偵役である主人公・亮が、麗子の死の真相をさぐりながら訪ね歩く中学の同級生たちの現在の、なんとイタいことよ。地方都市の片隅で、地元の仲間たちとつるみながらもくすぶって、いくつもの屈折を抱えながら時が流れていく…、そんな淀んだ焦燥とでもいう感じが、亮の一歩引いて冷めた視線を通して伝わってくる。 解説でも書かれていたとおり、終始「共同体の外からの視点(プライベート・アイ)」で語られる。つまり、紛れもなくハードボイルド。 ただまあ、かつて好意を寄せていた麗子の妹とはいえ、ほとんど会ったこともないその妹・千里とそんなすぐに打ち解けるのか、とか、父親の葬儀なのに態度が冷たい、など、突っ込みどころは多々ある。が、じつはそのあたりにも細かい気配りが効いている設定なんでは、とも思う。(大幅改稿のおかげなのか?) また、冒頭から主人公に伝えられる麗子の死、そして帰郷の理由である父親の死(葬儀)、ストーリー途中での悲劇…、軽快な語り口とは裏腹に、描写される出来事はなかなかに重く、そして暗く陰りがある。25年前の小説だけど、いま読んでも面白かった。 しっかし、このタイトルはもう少し何とかならなかったのか。
by t-mkM
| 2015-07-21 00:25
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