すでに「ベストセラー解読」なんていう記事にも登場している本なので、話題になって売れてもいるようなのだが。
読んでみて、やっぱり面白かったので。 『断片的なものの社会学』岸政彦(朝日出版社、2015) 個人の生活史についての聞き取り調査をつづけてきた、社会学を専門とする著者による、エッセイといえばいいのか、何とも不思議な本。 タイトルに「社会学」とあるけど、そんなお堅い雰囲気はまったくない。長年の聞き取り調査からこぼれ落ちた、それこそ人々の生活や人生においてエピソードにすらならない「断片的」で細かい語りをもとに、分析や解釈といったものほどこさず、そのまま提示しながら著者の思いがつづられていく。 フツーの人々、と上では書いたけど、じつは本書に登場するさまざまな語りは、けっこう突飛だったり、かなり可笑しかったりする。ただ、自分の隣にはいなさそうでも、隣の隣くらいには住んでいそうな見ず知らずの人々による、そういった語り。それらの「語り」は、まあウソでないにしても、おそらくすべてが事実ではないのは、とも思う。でも著者は、そんないろんな「語り」をまるごと引き受け、それらの中からいまの世の中や社会にも目をこらしていこうとする。 著者の前作に『街の人生』(勁草書房、2014)というのもあって、こちらはマイノリティを生きる個人の語りをまるごと載せた、リアルなライフヒストリーの本だ。こちらも手に取ってみたが、なんとなくいまひとつ”乗れなかった”。けれども、この『断片的なものの社会学』は、即読み切ってしまい、繰り返し読んでみたいと思わせるものだった。なんだろう、どこが違ったんだろう? よく分からないが。 ということで、もう一度読んでみるつもり。
by t-mkM
| 2015-08-28 01:04
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