このところ、読みたいと思う本を手元に切らしていて、次は何を読もうかと思っていたところ、K(かんから)から「読んでみてよ」と渡されたのがこんな本。
『最果てアーケード』小川洋子(講談社、2012) すでに文庫にもなっているようだけど、読んだのはハードカバーの初版。 アマゾンにある内容紹介はつぎのとおり。
メインストリートから外れた、ひっそりとしたアーケードを舞台にして紡がれる、連作短編集。 これだけで、小川洋子の(とくに初期のころの小説をいくつか読んだことのある人なら)小説世界だなぁ、と思えるのだけど、この小説も概してそんな感じで展開していく。 …ように思えたけど、後半の3つくらいの短篇に至って、「おやっ?」という感じで時空が歪んできて、重層的な受け取りが可能になるかのようなラストへ。「最果て」というタイトルも、ここまでくると腑に落ちる。 奥付を見れば東日本大震災のあとに出ているわけで、当然ながらそのことは意識はされているはず。 でも、震災を直接的に描いたとして話題になったいとうせいこうの『想像ラジオ』では、あんまり乗れなかったものの、こちらの『最果てアーケード』における「死」のありようは、ラストの茫洋とした描き方もあって、いつまでも印象に残るように感じられた。ちなみに、刊行されたのは『想像ラジオ』の方が後ではある。 それとアマゾンのレビューにもあったけど、冒頭の「衣装係さん」で語られる架空の舞台衣装を製作する心がけらしきものは、なんだか唐突のようにも感じたけど、作者の創作方法を自ら語ったもの、とも読めるかもしれない。 マンガの原作として書かれたようなので、マンガの方とも読み比べてみたい。
by t-mkM
| 2016-01-21 01:05
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