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ラストが印象に残る『最果てアーケード』

このところ、読みたいと思う本を手元に切らしていて、次は何を読もうかと思っていたところ、K(かんから)から「読んでみてよ」と渡されたのがこんな本。

『最果てアーケード』小川洋子(講談社、2012)


すでに文庫にもなっているようだけど、読んだのはハードカバーの初版。
アマゾンにある内容紹介はつぎのとおり。

ここは、世界でいちばん小さなアーケード――。
愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。
小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語

天井は低く、奥行きは限られ、ショーウインドーは箱庭ほどのスペースしかない。そのささやかさに相応しい品々が、ここでは取り扱われている。使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条(バネ)、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。どれもこれも窪みにはまったまま身動きが取れなくなり、じっと息を殺しているような品物たちばかりだ。――<本文より>

メインストリートから外れた、ひっそりとしたアーケードを舞台にして紡がれる、連作短編集。
これだけで、小川洋子の(とくに初期のころの小説をいくつか読んだことのある人なら)小説世界だなぁ、と思えるのだけど、この小説も概してそんな感じで展開していく。
…ように思えたけど、後半の3つくらいの短篇に至って、「おやっ?」という感じで時空が歪んできて、重層的な受け取りが可能になるかのようなラストへ。「最果て」というタイトルも、ここまでくると腑に落ちる。

奥付を見れば東日本大震災のあとに出ているわけで、当然ながらそのことは意識はされているはず。
でも、震災を直接的に描いたとして話題になったいとうせいこうの『想像ラジオ』では、あんまり乗れなかったものの、こちらの『最果てアーケード』における「死」のありようは、ラストの茫洋とした描き方もあって、いつまでも印象に残るように感じられた。ちなみに、刊行されたのは『想像ラジオ』の方が後ではある。

それとアマゾンのレビューにもあったけど、冒頭の「衣装係さん」で語られる架空の舞台衣装を製作する心がけらしきものは、なんだか唐突のようにも感じたけど、作者の創作方法を自ら語ったもの、とも読めるかもしれない。

マンガの原作として書かれたようなので、マンガの方とも読み比べてみたい。
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by t-mkM | 2016-01-21 01:05 | Trackback | Comments(0)
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