なじみの無い版元の2冊

すでに7月も12日である。
梅雨も明けないうちからこの暑さでダレているのか、すでに夏休みモードへ入りつつあるのか、巷はどことなくマッタリとした感じが漂っている、ように感じられる。
そんななか、最近読んだ本のうち、あまり見かけない出版社のもので印象的だったのを2冊ほど。

『本屋、はじめました』辻山良雄(苦楽堂、2017)

著者は、大学卒業後リブロに入社し、各地の支店で店長も務め、最後は池袋本店で閉店を見届けた後に、2016年1月に荻窪で個人の新刊書店「Title」を開業した、という方。その「Title」を開くまでの経緯を綴った本である。

ここ数年、個人で古本屋を開いた、という話しはワタクシの周辺でも聞こえてきたけれど、新刊書店を開業というのはほとんど覚えが無い。近所などを見渡しても、新刊書店は閉店が相次ぐばかりだし。(ここ最近では古本屋の開店、というのも聞かないけど)

この種の本だと、著者の熱い思いが綴られて…、といった感じかと思いきや、自身を見つめる冷静な目線や、ふり返って開業の経緯などを綴る文面は、むしろ淡々としている。そしてその分、腑に落ちるところが多いように感じられた。しかも、初期投資計画や初年度の収支決算まで載っていて、ここまで開示している"書店開業本"は、ちょっと無いのでは。

印象に残ったのは、どこで店を開くか、ロケハンと称して夫婦で尋ねた鎌倉と松本の印象を書いた箇所。店を開く、という視点ならではのように感じた。
また、カフェも併設しているため、ドリンク以外に何を提供するのか思考錯誤する箇所も目に止まった。なんだかんだで「個人店の楽しさが詰まっているのは飲食」という指摘には、こちらも「一日古本カフェ」なんてやったりしたこともあって、ナルホドと思ったり。

もう一冊は、ここで取り上げるのは珍しい写真集。

『写真集 浅草 2011-2016 六区ブロードウェイ 日本人の肖像』初沢克利(春風社、2017)

500ページを超える、すべてがモノクロの写真集で、ずっしりと分厚い。よって値段もけっこう(税抜7000円)する。
じつは図書館で見かけたのだけど、手にとってページを開くと、なぜか見続けてしまう。写っているのは、浅草に集ってくる、または住んでいる(と思われる)ごくフツーの人々である。重たいのは覚悟のうえで借り出し、最後まで2回、紙面をながめ続けてしまった。

浅草六区には大道芸をやる人がいるが、そこに集まってくる人々だけを捉えた写真が冒頭にまとめて掲載されている。たぶん、観客とともに大道芸をやっている方も映り込むようなショットで撮るのがフツーだと思うが、そうではなく、あくまでも観客だけを捉えた写真が続くのである。このはじまり方は、ずいぶんと変わっているのではないか。
そんな感じで、ちょっと他の写真集とは違っている(と思う)。

最後に載っている著者の文章によれば、欧米人と異なって日本人を象徴するような写真をなかなか撮れなかったが、大道芸を観る人を撮ることでそのヒントが見えた、と言う趣旨が書かれている。そんな目で写真集を見返してみると、また味わいが変化するようにも感じられた。



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by t-mkM | 2017-07-12 01:49 | Trackback | Comments(0)
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