ぜひとも続きが読みたい! と思わせる数少ない小説のひとつ、『機龍警察』シリーズ。
その最新作である長編第5作を読んだ。 『機龍警察 狼眼殺手』月村了衛(早川書房、2017) 『ミステリ・マガジン』に連載されていたもの。 図書館に予約していて、ようやく回ってきた。(続きが読みたいなら買えよ、ってもんだけど…) 以下はアマゾンの内容紹介から。 経産省とフォン・コーポレーションが進める日中合同プロジェクト『クイアコン』に絡む一大疑獄。特捜部は捜査一課、二課と合同で捜査に着手するが何者かによって関係者が次々と殺害されていく。謎の暗殺者に翻弄される警視庁。だが事態はさらに別の様相を呈し始める。追いつめられた沖津特捜部長の下した決断とは――生々しいまでに今という時代を反映する究極の警察小説シリーズ、激闘と悲哀の第5弾。 このシリーズ、物語の背景として、国際テロ組織の日本国内への流入からはじまって、北アイルランドをめぐるテロ組織の抗争、ロシアンマフィアによる武器売買のブラックマーケット、チェチェン紛争の裏側などなど、リアルに進行する国際情勢とも絶妙にリンクしていて、それゆえか「至近未来小説」とも称される。 これまでのシリーズ長篇との最大の違いは、特捜部が擁する最新鋭の兵器、機龍兵(ドラグーン)による機甲兵装のアクション・シーンが全く出てこない、という点だろう。 アクション、というか戦闘場面については、後半からラストに至るなか、それこそ息が詰まるような死闘が描かれるのだけど、生身での戦闘シーンであって、機龍兵の出番はまったくない。それでも、物語としての密度、熱量、情報量は、シリーズ中でも白眉、いや、もっとも大きいと言ってもいいか。 なかでも驚きは、特捜部長である沖津の謎めいた部分の背景が、(少しだけ)明らかにされるところか。また、長篇2作目『機龍警察 自爆条項』につづいて、凄腕テロリストであったライザ・ラードナー警部の内面がさらに掘り下げられる箇所も読みどころ。とはいえ、特捜部の面々はそれぞれに活躍どころが割り振られ、さらに捜査一課、二課との合同捜査が展開するなど、群像劇としての警察小説という側面が強く出ていることも、今作で強く印象に残る。 そして、財務捜査官や国税庁の役人といった新キャラクターを登場させているのも、シリーズものとしてはなかなかニクい演出。この財務捜査官が、出納記録やらのデータ(数字)の山と格闘して容疑者の行動を洗い出すシーンは、これまでにないパターンだけどなじみやすくて、「こんな描き方もあるのか」と新鮮だった。 今回、「敵」の輪郭がさらに見えてきた感じではあるので、次作ではこの辺がさらに突っ込んで描かれることになるのか。 早く続きが読みたい。
by t-mkM
| 2017-12-26 00:51
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