このところ、短篇集の小説を二冊、読みました。
どちらも、必ずしも「傑作!」とは言えないかもしれませんけれど、読みやすくて、読んだ後にどこかしら引っかかるようなものが残る、そんな感じの二冊です。 まず一冊目、 『女たちは二度遊ぶ』吉田修一(角川書店)。 11本の短篇すべてが「......の女」というタイトル統一され、11人の女性たちそれぞれの日常が切り取られています。ところが、語り手は女性ではなく、すべて男性。本の表題も含めて、この辺のひねりぐあいが、いかにも吉田修一の小説かな、と思わせます。所々の会話にも印象に残るセリフがあったりしますし。 なお、10番目に置かれた「十一人目の女」は、そのタイトルからしてたぶんラストに来るはずだったと想像しますが(これだけが三人称の語り手だし)、ちょっと後味の悪い内容だったために、ラストの一つ手前である10番目になったように思いますけど、どうでしょうかね。 それから、 『バレンタイン』柴田元幸(新書館). 主にアメリカ現代小説の翻訳家として知られる著者による、はじめての小説。 どれも短い短篇(というのもヘンですが)で、純然たる小説というより、小説とエッセイの中間といった味わいの作品集です。 読み終わって印象的だったのは、著者自身の過去をいまの視点からふり返る、とでもいうような内容がかなり多かったこと。少年時代や両親のことなどが、繰り返し描かれています。 柴田氏は翻訳だけでなく、エッセイなどもたくさん書かれていますが、これまで、あまり自分自身の過去や家族のことは語ってこなかったように思います。この小説集では、わりと幻想的な設定を使ったりして、切ないような描写もけっこうあって、読み手自身にも過去をふり返させるような、不思議な力があります。 でもこれ、「小説」ですから、どこまでが柴田氏の経験なのかは、分かりませんけど。
by t-mkM
| 2007-03-30 22:48
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