いま、新刊で並んでいる文庫から、こんなのを寝しなに読んでいる。
『作家的時評集2000ー2007』高村薫(朝日文庫) 文庫オリジナル。 この手の時評集というのは、単行本でじっとまとめて読むより、あちこちで、少しずつ、考えながら読んでいくのが似合っているように思うので、初めから手軽な文庫で出たことはヨイな。 タイトルにある、わざわざ付けたであろう「作家的」というのが意味深。つらつら読んでいくと、ここに込めたであろう著者の意図が、じわじわと伝わってくる気がする。この本については四谷書房さんも 日記で少し触れていたけど、ここにある時評に通底しているのは、小説家としての「言葉への信頼」か。 小泉さんが首相になったとき、その支持率の高さに驚き、「自分が少数派になった」という痛切な感覚を味わったという著者。大衆小説家として、もはや大衆の側では無くなったことに、考え込んでしまったとか。それでも、フツーの人々に向けて時評を書き、選挙の時には投票へ行こうと呼びかける。状況に対して強い違和感を持ちつつも、諦念せずに、その違和感を作品や時評として言葉に託し、現状を少しでも変えたいという姿勢が強く印象に残る。 そういえばちょっと古いけど、『小説新潮』10月号で、「大河小説が読みたい」という特集を組まれていて、高村薫に読書歴などについてインタビューを載せている。 この『作家的時評集』と合わせて読むと、よりいっそう「高村薫」という作家の冷静に熱い内面が垣間見える、かな。
by t-mkM
| 2007-11-28 22:40
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