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翻訳家の素顔
ジュンク堂書店池袋本店で定期的に行われている、翻訳家との対談を収録したシリーズ第2弾。

『翻訳文学ブックカフェ2』新元良一(本の雑誌社)
装丁はクラフト・エヴィング商會。


ワタクシ自身、以前はそれなりに海外ミステリを読んでいたのだけど、最近では翻訳ミステリをあんまり(というかほとんど)読まなくなった。海外文学にしても、たまに読むくらいか。

そんな感じで、とても海外文学のよい読者とは言えないのだけれど、シリーズ1冊目につづき、この第2弾もけっこう楽しめた。海外文学をファンにとって、この本は翻訳家の舞台裏をいろいろと垣間見ることができるという点で、得難い本ではなかろうか。
なんといっても、インタビュアーの新元氏の話術が光る。つたないようでいて、対談相手である翻訳家の思わぬエピソードを、しっかりと聞き出してしまうところは、さすが。

いろいろと面白いところがあるけど、柴田元幸氏のところからちょっと引用。

新元:ところで、柴田さんは、どうしてあんなにたくさんの仕事ができるんですか。謎なんですけど。
柴田:無責任だから(笑)。すごく俗な能力の瞬間湯沸し器型なので、僕はじっくり考えてものが出てくるという能力はないんです。瞬発的に「これはこうだ!」と決めてパッとやるのが得意なんです。そうなると勢い仕事量は多くなりますよね。
(中略)
新元:テキストを見たときに翻訳ができていたりして。辞書などは?
柴田:引きます。引きますよ、辞書は。
新元:だいたいこれはこういうことなんだという決断力の問題なんでしょうか。
柴田:決断力と、それから、よくわからないときに、適当にやっておいて次に行ける能力というのが大事だと思います。
新元:はあ。
柴田:どのみちあとでまた戻るわけだから。戻って全体を見てからのほうがよく見えることも多いし、その一点で止まって考えていてもしょうがないですよね。
新元:ほお。
柴田:人生すべてそうだと思うんですけども(笑)。偉そうだけど(笑)。

次は、東京大学での同僚でもある沼野充義氏。

新元:文学の紹介者として、沼野さんは翻訳をどうとらえてらっしゃるんでしょうか。
沼野:翻訳ってね、年をとってますます大事なものだな、と思うようになってきたんです。若い頃は生意気ですから、翻訳なんて二次的な仕事だくらいにしか思っていませんでしたけれども。
(この後、おもしろい話しが続くが、バッサリと中略)
でも最近、立場上、学生や院生の書く論文ばかり読まされるようになってきまして、正直なところ、なんだか辛い面もあるんですね。つまり、とても頭がよい若手研究者が論文のなかで難しいことを得意げに言っていて、確かにすごいとうなることもあるんですけど、いったいこれって何のために書かれているいるのかな、と思わないわけでもない。結局、つまんないですね。教師としてこういうことを言っちゃいけないんですけれども、一人の人間として言えば、自分が頭がいいということを証明したがっている研究者のつまらない論文を読むよりは、未知の作家の面白い小説を一つ読んだほうがよっぽど面白い。もっと一般的に言えば、ドストエフスキーとかレムとかサリンジャーといった作家の優れた作品をいい翻訳で日本の読者に届けて、多くの読者がそれを読んで感動するーーそのことのほうが社会的な意味はずっと大きいだろうな、ということなんです。

翻訳家の皆さん、けっこう率直に語ってますよなぁ。
by t-mkM | 2007-12-05 22:49 | Trackback | Comments(0)
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