最近出た新書のなかで、気になっていたのだけど、先日ようやく読んだ。
『変貌する民主主義』森政稔(ちくま新書) 新書だけども260ページほどあって、しかも活字は小さいし、内容ともどもけっこうな読み応えのある本。 いまでも国際面のニュースなどでは「民主化」を求める国々での動きが報道されたりするけど、日本や欧米では「民主主義」を基礎とする政治体制はすでに常識と言える。でも、昨今では定着したがゆえに「お題目」と化していたり、「陳腐だ」と感じられたりするのが現実ではないか。そんな「民主主義」を、ここ最近の状況に引きつけて、4つの視点(自由主義と民主主義、多数と差異と民主主義、ナショナリズム、ポピュリズムと民主主義、誰による、誰のための民主主義)からあらためて論じている。 いろいろあるんだけど、専門研究者の方によるまとまった感想があったので、クリップしておく。 民主主義とは何か――森政稔『変貌する民主主義』 ブログ「一酔人経綸問答」 この方も指摘しているけど、第3章「ナショナリズム、ポピュリズムと民主主義」(p159〜)で、要求が多様化した現在においてどうして圧倒的多数の支持を得る政権ができるのか、提示される仮説には「なるほど」と思わされた。 強引にまとめると、こんな感じ。 最近の公的な施設における要求には、おたがい矛盾するようなものや稚拙なものも少なくない。ここにはリフレクシヴィティ(再帰性、反省性)の低下があり、自分の要求を外から眺めて相対化することが省略されている。それでも、バラバラな要求を一致させられる意見を考えてみると、「この施設はサービスが悪い」といったものであろう。これは、さまざまな制約の中で運営せざるを得ない公的施設にとってはアンフェアな話である。 それが高じていき、不満を持ちながらも利益を共有しない者たちが、「ぶち壊す」ことだけは意見が一致することができ、その結果、以前よりも不愉快な環境となることを選択させられる。 良くも悪くも、新自由主義の影響って、かなり複雑かつ広範囲で射程距離も長いなぁ、と思わされた一冊。
by t-mkM
| 2008-08-21 23:36
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