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ひさしぶりの翻訳ミステリ

このところ、海外小説を読んでないなぁ、と思っていたので、少し前に出た翻訳ミステリを読んだ。

『シャッター・アイランド』デニス・ルヘイン(ハヤカワ文庫HM)

この本を読もうと思った直接のきっかけは、以前に紹介した『チーズの値段から未来が見える』で紹介されていたこと。現代日本の経済の動きをいかにとらえるか、という内容の本にあって、(たぶん)唯一取り上げられていた小説だったことと、わりと強く推されていたことが意外で新鮮に感じられたので(経済の本だったし)。


といっても、『シャッター・アイランド』は刊行時(ハードカバーは2003年)、評判がよかったようだし、作者のルヘインもすでに安定した人気作家であるようだから、いまさらではある。

以下、カバー裏の紹介文から。

精神を病んだ犯罪者のための病院で女性患者が謎のメッセージを残し、姿を消した。鍵がかかった病室からどのようなトリックを使って脱け出したのか?そしてその病室には「ローオブフォー」(4の法則)なる暗号がのこされていた。連邦保安官テディは病院に赴くがある事に気をとられ、捜査ミスをおかす。妻を殺した男がここに収容されていたのだ。ボストン沖の孤島に建つ病院で惨劇が始まる。挑発的仕掛けのサスペンス。

これだけだと、何だかよく分からない。
けれど、最初のややもたついた展開を過ぎれば、あとはもうページを繰る手が止まらないような、スピーディーな展開。ミステリといえばミステリなんだけど、解説にもあったように、「自分探しの物語」だな、これは。
何を書いてもネタバレになりそうな構成なので、詳しくは書けないけど、ラストはちょっと驚きの結末に。(ハードカバー刊行時には、後ろの部分が袋閉じだったそうだ)

それにしても、エンタメではあるけれど、物語全体を覆うトーンは暗い。陰鬱としている、と言っていい。舞台は第2次大戦後まもない、50年代の設定。読み終わって、ラストの驚きが通り過ぎると、「なぜいま、そうした時代背景の(暗い)エンタメを書くのか?」という疑問が頭の隅にわいてくる。

本書のことを「自分探しの物語」と書いたけど、この主人公が取る行動のいちいちが、「9.11」後のアメリカと重なって見える。なんて書くと、いまさらステレオタイプな、と言われてしまうかな。
でもたぶん、その辺が、『チーズの値段から未来が見える』を書いた方が「オススメ」している理由なのかもしれない。
by t-mkM | 2008-09-15 23:53 | Trackback | Comments(0)


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