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2017年 02月 08日 ( 1 )

ごった煮宇宙的おもしろさの『ビビビ・ビ・バップ』

だいぶ間があいてはいるものの、これは『鳥類学者のファンタジア』の続編といっていいんだろうな。
たしか前作もけっこう長大だったと思ったけど、本作も660ページ。文芸誌『群像』に2年間にわたり連載されていたようだし。なんで、寝っころがって読むには不向き。寝しなに読みながら寝てしまい、チマチマとしか進まなかったけど、それは腕が疲れるため。

『ビビビ・ビ・バップ』奥泉光(講談社、2016)

「僕の葬式でピアノを弾いて頂きたいんです」
それがすべての始まりだった。
電脳内で生き続ける命、アンドロイドとの白熱のジャズセッション。大山康晴十五世名人アンドロイドの謎、天才工学少女、迫り来る電脳ウィルス大感染…。平成の新宿から近未来の南アフリカまで、AI社会を活写し、時空を超えて軽やかに奏でられるエンタテインメント近未来小説!

前作はと言えば、すっかり記憶の彼方ではあるけど、とても面白く読んだ覚えだけはある。
で、本作。ややもすると冗長になりがちな文体がちょっと気になるものの、いろんな題材がこれでもかとブチ込まれ、オモチャ箱を引っかき回すかの展開には目を見張るばかりで、『東京自叙伝』 以来、久しぶりの"奥泉ワールド"にどっぷり浸った感じ。

舞台は21世紀後半、それからもう少し下って今世紀末といっていい時期か。
語り手は猫、名前はドルフィー。
この続編の小説でドルフィーとくれば、絡んでくるのはもちろん、モダン・ジャズの巨人の一人、エリック・ドルフィー。
描かれるのは電脳が世界中に張りめぐらされ、AIやVRがとてつもなく進化した未来。
ジャスピアニストで音響設計士の主人公・フォギーが、多国籍&超巨大企業の重役である山萩氏から"架空墓"に関する依頼を受けて、その在処を尋ねるところから始まる。

自身の機械的な分身(アヴァター)がアンドロイドのミュージシャンと熱いセッションを繰り広げたり、分身どうしでVR(仮想現実)の街並みに入っていったり、しかもその分身どおしが寄席で落語を聞いたり、酒場で飲んだり議論を交わしたり…。まるでSFだけど、そこに大感染(パンデミック)の危機が迫ったりして、ミステリーや冒険小説?ふうのテイストも加わり、ジャズ・ジャイアンツの面々(チャーリー・パーカーやマイルス・デイビスなどなど)やら、落語の大看板(古今亭志ん生、立川談志)に将棋の名人(大山康晴)まで絡んでくる。
ラストでは壮大なるスケールの展開になってはいくものの、登場するアイテムは1960年代、70年代のあれこれで、著者の好みが反映されているのか、ちょっと可笑しい。

当時のジャズや風俗に詳しいと、より楽しめる事うけあいだけど、それに止まらず、AIが発達した先にある人間像とか、そんな哲学的な側面にも目配りの効いた内容で、文字どおりジャンル横断で楽しめる。


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by t-mkM | 2017-02-08 01:46 | Trackback | Comments(0)