仲俣x小熊 トークセッション

昨日は仕事を早めに切り上げて、仲俣暁生さんと小熊英二さんのトークセッションに参加するべく、ジュンク堂の新宿店へ。
ちなみにこのイベントは、仲俣さんの新刊『<ことば>の仕事』のプロモーションの一環とのこと。

当日、出かける前にジュンク堂新宿店のサイトを見たら、このトークセッションのことが掲載されていない。「ひょっとして中止になったの?」と心配したけど、ちゃんと受付が用意されていたのでホッとひと安心。
(それにしても、自サイトにイベントの告知を掲載した以上、終了するまでは当該イベントの内容くらいは掲載しておくべきではないのか)

仲俣さんもブログで書いていたように、当日は会場の外(とはいえ店の売り場だけど)に立ち見の人もそれなりにいた。また、拡声器であるラジカセ(!?)の音が小さくて、お二人の声がやや聞き取りづらかったのは、ちょっと残念ではあった。

仲俣さんがご自身の新刊の意図などを話すことからセッションが始まったのだけど、セッションの前半は、いまひとつ両者のやりとりがかみ合っていない印象を受けた。それに比べて後半、小熊さんが編集者時代を振り返って、「作家という人たちは呪われた人種である」と先輩編集者に言われた、といった思い出を口にされたころから、俄然エンジンがかかり始めて、ご自身の仕事に対する正直な思いなどを聞くことができたのは、なかなか楽しい時間だった。

憲法改正や教育基本法改正といった「ホット」な政治問題について、新聞のオピニオン欄などで小熊さんのコメントを読むことがわりとあるのだけど、いつもその冷静で独自な視点に学ぶところが多かった。
けれど、このトークセッションの後半では、9.11以後で世界が変わったなんて考えているのは世界で10億人程度、だとか、ご自身も含めて作家が文章を書くことは仕事への「愛」などではなくて、「呪い」のようなものではないか、といったことなど、落ち着いて受け答えていた前半に比べ、小熊さんの率直な物言いが印象的だった。

仲俣さんによれば、本の販促としてトークセッションを続けていくとのこと。
これからも、作家の意外な一面が垣間見えるとおもしろいな。
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# by t-mkM | 2006-07-08 22:35 | Trackback | Comments(0)

新着本をアップ

今週も新着本をアップしました。
今回は15冊で以下の通り。

『日本の流民芸』 鎌田忠良
『波の記譜法 環境音楽とはなにか』 小川博司、他
『辞書漫歩』 惣郷正明
『新藤兼人映画評論集1 私の足跡・独立プロ三十年のあゆみ』
『しゃれ・ことば 言語遊戯クロニクル』 斎藤良輔
『アール・デコの時代』 海野弘
『ユリイカ 1976年6月臨時増刊』 総特集「シュルレアリスム」(巌谷國士 編集)
『カラー 浮世絵の秘技画』 福田和彦
『デビッド100コラム』 橋本治
『夢野久作全集4』 「ドグラ・マグラ」

[以下は保育社カラーブックス]
『茶碗のみかた1』 野村泰三
『茶碗のみかた2』 野村泰三
『やきもの風土記』 崎川範行
『やきもの入門』 田賀井秀夫
『駅弁旅行』 石井出雄

日本の推理小説の古典から流民芸、環境音楽から浮世絵と、
ワタクシたちの興味の赴くままに集めていたら、今回はこんな感じに。
ぜひ、サイトの方もご覧ください。

http://t-furuhon.com/page_new/page_new_1.html
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# by t-mkM | 2006-07-05 22:14 | Trackback | Comments(0)

芥川・直木賞の候補作、環境問題

すでに報道されていたけど、第135回芥川賞・直木賞の候補作が発表された。
(以下は文藝春秋のサイトから)
芥川賞候補
直木賞候補

今回の芥川賞候補作は、新潮社の文芸雑誌『新潮』からの作品が5作中4作を占めていて、専門家?による憶測 もあるようだけど、どうなることやら。
一方、直木賞のほうだけど、伊坂幸太郎が5度目の候補とか。でもなんとなく、今回も受賞を逃すような気が...。

選考会&発表は7月13日。



今年の2月に刊行された本で、気になっていた
『環境問題のウソ』池田清彦(ちくまプリマー新書)を読む。

このちくまプリマー新書って、たぶん中高生がターゲットで、岩波ジュニア新書の読者層ともかぶるのではないか。そうした中高生向けの分野にも関わらず、こういった「正論に異を唱える」ような内容の本が出ることは、ちょっと画期的?のように思うけど、どうなのだろう。
ま、それはさておき。

本書の中身は、たしかにタイトルどおり。
地球温暖化からはじまってダイオキシン、外来種、自然保護という4つの問題について、世間一般に流布して定着している(と思われる)さまざまな言説を、マスコミにはあまり出ないデータや推論にもとづいて批判していく、という内容である。
この本で著者はたびたび、「どんな行為にもメリットとデメリットがあり、デメリットの方がメリットより大きければ、お題目が立派でもその行為はおやめなさい」と書く。
それはその通りなのだが、問題はどういう基準でメリットとデメリットを分けるのか、ということだろう。この点についての突っ込んだ記述が見られないのは残念。
でも、自然環境の問題について、対立する見方や意見、データとその解釈を示して分かりやすく見せる点で得難い本であるし、大人でも一読する価値はあるように思う。

ちなみにこの著者は「構造主義生物学」という立場にたつ研究者。
以前に『構造主義科学論の冒険』(講談社学術文庫)を読んだけど、印象に残っているのが「客観的真理の外在性を仮定しなくても、科学研究は遂行できる」。つまり、真理なんてことを目指さなくても、科学の研究は十分に可能だ、ということ。(詳しくは上の本を読んでください)

まあ理工系の研究って、往々にして唯一の解を追い求めがちになるものだけど、自然環境の問題では、「これが原因でこれが解決策だ!」的なスッキリしたものにはならない方がフツーのような気がする。
そういう意味でも、少数の異論にも耳を傾けるのは大事かも。
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# by t-mkM | 2006-07-04 01:12 | Trackback | Comments(0)

トーク・セッション@気流舎(下北沢)

一昨日、1日の土曜日は下北沢へ。
ウラゲツ☆ブログのエントリで知った、「気流舎」という古書店になる予定のお店で開催されたトークセッション『本・棚・都市』に参加してみた。

この気流舎、じつはまだオープン前で、ご自身で手掛けている内装もまだ未完成とのこと。なので、会場となったその店には材木などが脇に積み上げられていたり。しかも4坪という広さ。なんだけど、けっこうな参加者があって満員だった。

本・棚・都市を編集する、というところから話しがはじまり、現在の書籍の流通実態や新刊書店を開店する際の敷居の高さ、それに比して古書店開業のハードルは低いこと、ベータ本というアイデアなど、気流舎の方も最後に言われていたけど、ウラゲツさんの前向きな話しぶりが印象的だった。
またブックピックオーケストラの内沼さんが話された「本を本棚から解放しよう」という考え方や、「なぜ行列ができる本屋は無いのか?」という目の付けどころから話しが広がっていったり、駆け出しの古本屋としてもいろいろと興味深く、なかなかおもしろいイベントだった。

話しの最初の方でウラゲツさんは、「いまの世の中にある決まった枠組みを(出版ということを通じて?)ずらしていきたい」というようなことを言われていたけど、版元だけでなく新刊書店や古本屋、また読者や関心ある人などもいっしょになって、持続的な活動ができるといいな、と思ったりもした。

そうそう、気流舎さんのオープンも楽しみだ。
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# by t-mkM | 2006-07-03 00:38 | Trackback | Comments(2)

新着本をアップしました

このブログでの報告が遅れましたが、一昨日、新着本10冊をアップしました。
以下が今回のリストです。

『日本のきもの 浦野理一染織抄』
『現代の民芸陶器』 伊東安兵衛
『琉球布紀行』 澤地久枝
『画文集 山の独奏曲』 串田孫一
『別冊太陽 辰巳芳子の家庭料理の世界』
『智の粥と思惟の茶』 松山猛
『にっぽん台所文化史』 小菅桂子
『ムーミンのふたつの顔』 冨原眞弓
『絵本のつくりかた2』 貴田奈津子
『コレクション』 ジュンコ・コシノ

今回はおもにKのセレクトが強調されているでしょうか。
ぜひサイトの方もご覧ください。
http://t-furuhon.com/page_new/page_new_1.html
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# by t-mkM | 2006-07-01 00:12 | Trackback | Comments(0)

ミステリマガジン創刊50周年、本屋大賞のこと

すでに8月号が書店に並んでいるけれど、『ミステリマガジン』の7月号(No.605)は「創刊50周年記念号」だ。
50周年ということで、各界の著名人によるエッセイ大特集があって、17人が寄稿している。大沢在昌(現在、推理作家協会の理事長とは知らなかった)や北村薫、原りょうといったミステリ作家のほか、哲学者の木田元、養老孟司、柴門ふみ、といった方々も書いている。
その中に映画監督の林海像もいて、現在シリーズを制作中の<探偵事務所”5>について触れており、
「いつか......探偵ものの故郷である文字物語の中で展開したいと願っている。」
と書いている。

ふーん、と思って7月号をパラパラ見ていくと、「DVD&Video Review」という欄で偶然にも「探偵事務所”5」が取り上げられている。どういう評価かというと、「世界に誇る探偵シリーズ誕生」という大絶賛。
昨年の11月に劇場版を公開したらしいのだが、現在はDVDだけでなく、ネット上でも新作を無料で配信しているらしい。
探偵事務所”5 オフィシャルサイト
そういえば、以前に新聞の広告で見たような覚えがあるのだが、すっかり忘れていた。
要チェック。

もう一つ目についた記事は、連載コラム「隔離戦線」で書評家の豊崎由美氏が書いていた「本屋大賞」のこと。第三回の本屋大賞がリリー・フランキー『東京タワー』に決まったことに対して、同業の池上氏が「本屋大賞も終わりだと思った」と書いた件へコメントしているのだ。
豊崎氏も書いているけど、「いまさらミリオンセラーの本を選ぶとは、ベストセラーは現場で作るという意図で始まった賞とも思えぬ授賞内容」というのにはワタクシも同感。でも豊崎氏によれば、この賞が人口に膾炙して投票する書店員が増えていけば、どこかで予想できたことだともいう。

いつでもどこでも代替可能な平均的な何かを選択する。それが民主主義の意志なのです。どーもこーもならん作品を落とす程度の知恵は持ち合わせていても、同じ浅知恵でもって、突出した表現も「わかんなーい」の一言で切り捨てる。それが民主主義の限界なのです。(中略)投票によって決める民主的な本屋大賞が、この民主主義の陥穽から逃れられるはずもありません。

きびしいようだけど、的を得たコメントだと思う。
しかるに本屋大賞の意義は、こうした点とは別に(独立に)語られることにあるのでしょう、きっと。(8月号ではその点を語る予定だとか)

で、上で言われている民主主義や公共性といったことを、モダンやポストモダンの再定義からはじめて「テーマパーク化」などといった切り口でもって現在に引きつけて論じているのが、
『モダンのクールダウン』稲葉振一郎(NTT出版)
小難しい内容なので、感想は後ほど。
でも、小難しいなりに興味深い指摘もあって、この次にはオルテガの『大衆の反逆』を読む必要があるかなぁ、と思わせてくれたことだけはメモしておく。
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# by t-mkM | 2006-06-30 23:46 | Trackback | Comments(0)

波の記譜法、気になる部分

今日の都心は真夏日とか。
雨が降りつづけているのもイヤだけど、いきなり暑くなるのもこたえる。

日中、古本屋で『波の記譜法 環境音楽とはなにか』(時事通信社)という本が目に止まったので、買ってみる。もう20年前の本だけど、巻末には環境音楽という切り口でイーノやライヒなどのレコードもけっこう紹介されていて、なかなか面白そう。


単行本が2000年に出ていたらしいけど、そのときは気がつかず。最近になって新書で出たこともあって読んでみた。
『気になる部分』岸本佐和子(白水uブックス)

著者はニコルソン・ベイカーなどの翻訳で知られている方。この人が翻訳されている本も変わった作風のようだけど、このエッセイ集を読むと、訳者ご自身も相当にヘンであることがわかる。いやホントに。
この本、読んだからといって、さしあたり何か得することがあるとか、感銘を受けるとか、そういうことはほとんどない。ないけれど、でも読み出すと止められなくなって、なぜだかズルズルと読んでしまう。
そして、あちこちで笑える。
で、笑っているうちに読み終わってしまう。

第2弾は出ないのだろうか。
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# by t-mkM | 2006-06-28 00:24 | Trackback | Comments(0)

シャングリ・ラ

ということで、ようやく読了しました、『シャングリ・ラ』池上永一(角川書店)

手を出したきっかけは、昨年に刊行された国内のエンタメ小説の中で、けっこう評判がよさそうだった(たとえば評論家の大森望氏、など)こと。
著者は沖縄県出身の作家で、これまでにも沖縄や離島を舞台にした小説を何冊も書いていて、ワタクシも1,2冊読んだことがある。

今回の舞台は沖縄ではなく、東京。それも地球温暖化によって都心に激しいスコールが降るくらい熱帯化した、近未来の東京である。こう書くと、同じような設定で近未来の東京を描いた、古川日出男の『サウンドトラック』が思い浮かぶけど(こちらも長い)、まったく異なる読後感。

あとがきによると、著者はこの物語を書きはじめるにあたり、東京のシンボルを探していたのだとか。いろんな人に聞いたが、なかなかしっくりくる答えが返ってこない。で、ある時、ヘリで東京を上空から眺めたさい、すぐにシンボルは見つかったという。それは「森」だそうだ。
そして、この本のもう一つの「核」は、温暖化の原因とされている二酸化炭素の増加をめぐる現在の国際的な情勢までをも、小説の枠組みに取り込んだことだろう。細かいことに目をつぶれば、これからの国際社会における経済ルールまでを(現実っぽく)具体化してみせてくれた小説は、これが初めてかも。

ブ厚い大作ではあるけど、テンポのいい会話とスピーディーな展開でページをめくるスピードは落ちない。しかも、登場人物たちは多彩でごった煮的。(反政府ゲリラの女子総統。その育ての親のニューハーフ。牛車に乗って薙刀を使う集団、などなど)
ただ、後半がややマンガチックになりすぎた感がなきにしもあらず、か。
それでも、スケールの大きな著者の(暴走気味の)想像力には感服。
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# by t-mkM | 2006-06-27 23:43 | Trackback | Comments(0)