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『自分探しが止まらない』を読んだ

いくつか評判を聞いていたので、手に取った。

『自分探しが止まらない』速水健朗(ソフトバンク新書)

なかなかオモシロかった。
ことあるごとに「本来の自分とは?」や「ここではないどこか」に興味をおぼえてしまう人、またはそういった「自分探し」の風潮に違和感を抱いている人は、一読の価値はあるかも。
(たしか、ダイバーのSさんも月刊情報誌『ほんのまち』の連載で、この本に触れていたような覚えがあるけど、あれは何月号だったか?)



裏のカバーの紹介文に

若者を中心として「自分探し」が止まらなくなっている日本の姿を赤裸々に暴き出す一冊! 夢を追っているうちに「自分探し」の落とし穴へ転落しないための社会の歩き方がここにある。

とあって、前半はまあそのとおりなのだが、後半にある「社会の歩き方」は、じつは本書には書かれてない。(取って付けたような数行があるだけ)

というか、この本のキモは前半の2章で詳しく描かれる、いまの日本で見られる様々な現象やヒットするモノに共通する何かを、「自分探し」という視点で分かりやすく提示してみせた点にある。
本書で取り上げられるTV番組の『あいのり』も、シューカツ学生のバイブルだという『絶対内定』も、その名前しか知らなかったワタクシのようなオッサンでさえ、「自分探し」という病がいかに広く浸透し、ひいては格差を広げる元凶ともなってしまうのかが、よく分かる。(分かりやすすぎ、という気がしないでもないが)

しかも、「自分探し」のルーツは団塊の世代にあり、いまの団塊ジュニアの世代などで行われている「自分探し」とも共通点が多い、なんて指摘されると、オッサンやオバサンでも「自分探し」の魔の手からは逃れられないのかも。
気をつけねば。

また、2004年に起きたイラクで人質となった3人に対する社会的なバッシングも、「自分探し」という点から掘り下げられていたら、後に起こったイラクで拘束・殺害された青年の事件は異なった展開になっていたかも、という指摘は新鮮に映った。

まあ、「ほんとうの自分」なんてのは探すものでも見つけるものでもなくて、普段の生活や毎日のあれこれの積み重ねの結果、あとからついてくるもの、自覚するもの(されるもの)なんではないかと思うけど。

あまり「自分探し」にハマらないよう気をつけましょう、というのが(ヒネリもなんにもないけど)オチか。
by t-mkM | 2009-01-21 23:56 | Trackback | Comments(0)


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