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村上春樹氏のエルサレム賞受賞スピーチ

村上春樹氏のエルサレルム賞授賞式におけるスピーチの件が、話題になっている。
この日記でも取り上げたので、フォローしておこうと思う。

まず、孫引きだけど、現地の新聞に出ていたという原文での抄録が以下に。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/26ca7359e6d2d15ba74bcdf9989bee56
(著名なブロガーである池田氏は、このスピーチを高く評価されているようである)

そして、共同通信の配信によるスピーチの要旨。
http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009021601000180.html

リンク先が消えるかもしれないので、以下に要旨を全部引いておく。

 一、イスラエルの(パレスチナ自治区)ガザ攻撃では多くの非武装市民を含む1000人以上が命を落とした。受賞に来ることで、圧倒的な軍事力を使う政策を支持する印象を与えかねないと思ったが、欠席して何も言わないより話すことを選んだ。

 一、わたしが小説を書くとき常に心に留めているのは、高くて固い壁と、それにぶつかって壊れる卵のことだ。どちらが正しいか歴史が決めるにしても、わたしは常に卵の側に立つ。壁の側に立つ小説家に何の価値があるだろうか。

 一、高い壁とは戦車だったりロケット弾、白リン弾だったりする。卵は非武装の民間人で、押しつぶされ、撃たれる。

 一、さらに深い意味がある。わたしたち一人一人は卵であり、壊れやすい殻に入った独自の精神を持ち、壁に直面している。壁の名前は、制度である。制度はわたしたちを守るはずのものだが、時に自己増殖してわたしたちを殺し、わたしたちに他者を冷酷かつ効果的、組織的に殺させる。

 一、壁はあまりに高く、強大に見えてわたしたちは希望を失いがちだ。しかし、わたしたち一人一人は、制度にはない、生きた精神を持っている。制度がわたしたちを利用し、増殖するのを許してはならない。制度がわたしたちをつくったのでなく、わたしたちが制度をつくったのだ。


それと、「Kittens flewby me」というブログにあったハルキ風だという訳は以下。
http://ahodory.blog124.fc2.com/blog-entry-201.html

すでに報道はいろいろとなされていて、このスピーチの評価をめぐっても様々な見が交わされている。検索すれば、けっこうでてくる。

推測に過ぎないけど、おそらく村上氏は、国内での文学賞よりも母国以外での評価ということを重視した結果として、今回のスピーチを選んだのではないだろうか。
自分が書いた小説が複数の言語に翻訳され、世界各地の人々に読まれている。
そういった現実を、小説家として全面的に引き受けて、今回の授賞式に臨んだ、ということなんだろう。
率直に「大したもんだなぁ」と思う。
by t-mkM | 2009-02-17 23:16 | Trackback | Comments(0)


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