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夏休みレポート(その1) 維新派 犬島公演2010

先日、すこし早い夏季休暇をとった。
というのも、水族館劇場で知り合ったMご夫妻から「維新派の犬島公演をいっしょに観に行きましょう」と誘われていたからだ。維新派とは前々からMさんが「オモシロイよ」と言ってた劇団で、水族館劇場のように野外に大がかりな舞台を作って公演を行うらしい。また犬島というのは岡山県にある唯一の有人離島だそうで、現在、直島福武美術館財団により「犬島アートプロジェクト」が進められ、精錬所の跡を利用した現代アートの展示などが行われている。

維新派の公式サイト http://www.ishinha.com/index.php
犬島アートプロジェクト公式サイト http://www.inujima-ap.jp/index.html

くわえて言うと、10月末までの間、この一帯は「瀬戸内国際芸術祭2010」という大がかりなイベントを行っていて、維新派の公演はその一環でもある。
芸術祭の公式サイト http://setouchi-artfest.jp/

今回の維新派の公演は、この犬島にある精錬所跡を"借景"として舞台が作られている。観客は、公演用にチャーターされた船便で岡山から犬島までを往復するのだ。当然、観客は公演チケットに加えて往復の専用船の便も予約し、料金を払う。それでも、連日ほぼ満席(定員500)だったようだから大したもんである。

そういうわたしたちも、いくらMさんご推薦だからとはいえ、東京から新幹線で岡山まで行くのだから物好きである。もちろん、車中ではMさんご夫妻と酒盛り。
犬島に着いたのは午後3時半くらい。開演は6時半。しばらく時間があるので精錬所のなかを改装したさまざまな展示作品?を観た。入館料は1000円。どれも面白かったのだが、見学順序があまり自由でなく、再入場不可だったのが残念。この精錬所、けっこう規模が大きくて、まだまだ手の入っていない跡がいくつもあり、それらは無料で見学できる。発電所跡なんていうのまであって驚いた。この発電所跡、すぐにでも舞台で使えそうな具合だったなぁ。

公演会場の入口に設けられた屋台村でビールなど飲みつつ開演を待つ。
今回の公演タイトルは「台湾の、灰色の牛が背伸びをしたとき」。芸術祭の公式サイトによれば、

20世紀三部作を国内外の各地で公演してきた維新派が、その第三弾「アジア篇」をついに発表。犬島を起点に、海の道を経てアジアの多くの島や海へと連なるイメージを劇場化し、20世紀のアジアを多層的に検証する。

なんだとか。
午後6時半、太陽が精錬所跡の建造物や島の木々の間に没っするころに開演。しだいに暗さを増していく舞台、その反面で照明が映える。また精錬所の建物を生かした演出など、「いまここだけ」というライブ感は存分に味わえる。(ちなみに水族館劇場とは異なり、テントなどは一切無いので、雨がふれば舞台は雨ざらし、観客はカッパを着て観るのだそうだ)

数人の役者による不思議なコトバの掛け合いから始まり、だんだん大勢の役者が出たり引っ込んだりしながらパフォーマンスをくり広げ、芝居が進んでいく。ハッキリとしたストーリーは無い。それでも後半に至ると、前半で交わされていた不思議なコトバに輪郭が立ち現れてくるのは構成の妙か。Mさんいわく、「維新派では役者は駒にすぎない」と言うとおり、全員、顔や腕を白塗りして個性を消しているかのよう。水族館劇場のように際だったキャラクターの役者もまったく登場しない。というか、感情をこめた演劇的なセリフは全くないし、また役者がセリフを言うことで芝居が進んでいくという形式でもない。その点でいえば、演劇というよりパフォーマンス・アートというのが近いのかも。
それでも、台湾、日本、そして東南アジアの諸島や島々を人々が渡りあるき、しかしその後、戦争によって庶民の生活が翻弄されていくさまが浮かび上がるように、かつダイナミックに演出されていた。

そしてこの舞台では何よりも音楽と音響による部分が大きい。
水族館劇場は、仮に音楽が無くても十分にやっていけるだろうけど、維新派のこの舞台は、音楽を担当する内橋和久の楽曲と大規模な音響装置なくしては成り立たないだろう。で、この音楽がなかなか良かったのだ。内橋和久って、こんなこともやっているんだな。知らなかった。気になったので公演が終わってCDも購入した。

とまあ長くなったけど、今回の維新派の舞台、かなり良かったのである。
水族館劇場を初めて観たときも驚かされたけど、それ以来の衝撃というか。願わくば、もう一度観てみたいなぁ。
(つづく)
by t-mkM | 2010-08-03 23:49 | Trackback | Comments(0)


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