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「ふるぽん合宿フェア」 期間:8月6日(金)〜8月28日(土) 開催時間:平日11:30〜20:30 土・日・祝日11:30〜18:30 場所:神保町ブック・ダイバー 所在地:千代田区神田神保町2-12 川島ビル1F *ダイバーのブログ http://bookdiver.exblog.jp/ 土・日に実家へ行くにあたり、往復の列車内で読む本を図書館で探す。どうしたものかと思いながら、長めの小説でも読むかと、 『羊をめぐる冒険(上・下)』村上春樹(講談社文庫) 『チャイルド44(上・下)』トム・ロブ・スミス/田口俊樹訳(新潮文庫) を借りてくる。 『羊をめぐる冒険』は数年前に読んだけれども再読用に、『チャイルド44』はたしか評判のよかった翻訳ミステリだったと記憶していたので。 まずは『羊をめぐる冒険』。 村上春樹が80年代に出した長篇小説を読んだのは、かなりあとになってから。ハッキリ言ってここ数年である。唯一の例外は『ノルウェイの森』なのだが、これはブームだった学生時代に読んだものの、なんかピンとこなかった記憶がある。その後、やはり数年前に再読したところ、その印象は180度変わり、面白く読んだ。(でもバブル景気入口の当時、けっこう暗い物語なのにどうしてあんなに売れたのかはナゾだ) この『羊をめぐる冒険』、数年前に読んだものの、今回あらためて再読してみると意外なほど中身を忘れている(トホホ...)。そのおかげで?十分に楽しめた。 読んでいて、隠喩の多様さと頻出が目につく。作中でメタファーを多用する作家はほかにもいるけど、村上春樹にはかなわないように思う。でも、あちこちに出てくる隠喩につっかかって彼の小説を読めない、という人もいるんじゃないだろうか。ま、小説自体がメタファーだとも言えるかもしれないけど。 基本的には語り手である「僕」の喪失の物語、青年時代(若さ?)との決別の物語、なんだと思うが、今回再読してみて感じたのは三島由紀夫の影。ウィキペディアによると、三島由紀夫が割腹自殺をしたのは1970年11月25日、この『羊をめぐる冒険』の始まりも同じ日だ。それだけが「三島の影」の理由ではないけど、小説を読んで感じた印象が裏付けられたような気がしたのでリンクしてみた。 このウィキペディアのページには、「コッポラの映画『地獄の黙示録』に着想を得た」とも書かれている。これも、言われてみると分かる気がするな。 当分の間、"村上作品再読祭り"にして、次は『ダンス・ダンス・ダンス』を読んでみるか。 もうひとつは『チャイルド44』。 以下はアマゾンから上巻の内容を引用。
ミステリという頭で読み始めたので、1933年の旧ソ連における悲惨な飢餓状況が描かれる最初の数十ページは「??」という感じだったけど、そこを越えると俄然面白くなり、ラストまで一気に。終盤にいたり、この冒頭場面の使われ方も巧みだ。リドリー・スコット監督が映画化するそうだけど、映画にしたくなるのも十分うなずける。 なにより、50年代の旧ソ連におけるスターリン体制下の陰鬱な状況を、それこそ見てきたように語るその描写に圧倒される。国家保安省内部の権力争いはもちろんのこと、一般市民の間でも密告や裏切りがフツーにあり、登場人物たちが際限のない疑心暗鬼がとらわれていく様子や、いったん疑われたら最後、場合によっては簡単に殺されてしまう場面など、今読んでも「ありえるかもな」と思わせる、その筆力が見事。しかも、登場する人物それぞれにも奥行きがあって、いろんな意味で家族再生の物語としても読ませる。 著者は79年生まれ。これがデビュー作というから恐れ入る。解説で訳者である田口さんも(当たり前かもしれないけど)相当に絶賛していた。 「この国は理想国家ゆえに犯罪は存在しない」という建前で、警察機構の位置づけはかなり下の方だった(要するに犯罪がない"はず"だから刑事は必要ない)というのにも驚くが、そうした建前をあくまでも貫徹しようとする旧ソ連という"国家"のグロテスクさが、読んでいるとひしひしと伝わる。 人間、生まれてくる場所や時代は選べないけれど、いまここで生活していることはじつは幸運なのかも、なんてことが頭をよぎった。
by t-mkM
| 2010-08-17 01:29
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