またしても、ちょっと前に出た雑誌から。
いい中編小説を読んだので、忘れないうちに書いておく。 『あめりかむら』石田千(『新潮』2011年2月号に掲載) 石田さんといえば、いまやエッセイストという肩書きでいくつも本を出されている。書店などで行われるトークでも、けっこう名前を目にする。かくいうワタクシも、一昨年だったか東京堂書店であったトーク・イベントに足を運んだし。 ま、ようするに、気になる書き手の一人なわけだけど、だいぶ前に読んだ石田さんのエッセイで、なぜだかイマひとつ「乗れない」ままで終わっていた。 そんな思いを抱えながら読み出した『あめりかむら』。エッセイと同じように、ひらがなを多用して短い文章を重ねていくスタイルは変わらないけど、すぐに小説の中に引き込まれて、一気に読んだ。 主人公は病の再発の懸念をかかえたフリーで働く中年の独身女性。 小説の前半、学生有志による業界勉強会で知り合い、社会人になってもつきあいのつづく知人たちに対する人間観察の描写にうなる。他人に対してことあるごとに評価を下すことや、そのどれもが冷めて辛口なところとか。また後半、ふとしたきっかけで訪れた大坂でのホテルにおける出来事から、居酒屋で仕事を紹介されて出向くくだりなど、出来過ぎの展開?と思えなくもないけど、不思議とあざとさを感じさせない。 ラストで感情が一気にはじけるシーンがあり、そこではちょっと唐突な感じを受けたものの、あらためてそのセンスと技量にやられた。 これにつづく石田さんの小説を、もっと読んでみたいと思わせる、そんな一編。
by t-mkM
| 2011-04-07 01:39
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