昨年はじめに北九州へ行く前後から、とりわけその年の「春の一箱古本市」へ出店することもあって、谷川雁や上野英信、森崎和江、炭鉱や筑豊に関係した本をいくつか集めてきた。
この三人の名前が出れば、当然「サークル村」ということになる。もう数年前からになるか、「サークル村」や谷川雁などを再評価する動きがあるのは、いくつかの本や雑誌での特集で見たりしてきた。そんな折、そのものズバリのタイトルを目にしたので、手に取ってみた。 『『サークル村』と森崎和江』水溜真由美(ナカニシヤ出版、2013) 400ページを越えるボリューム。博士論文を下敷きにしたというだけあって、60ページ近くもある「註」。もちろん学術論文ではないけれど、かなり読みごたえのありそうな本である。そんなこともあって、まだつまみ食い的にパラパラと読んだ程度なのだが。 本書は、炭鉱のサークル運動、サークル村、森崎和江を扱う三部構成。なかでも第二部の「『サークル村』の思想と運動」では、オルガナイザー的な存在であった谷川雁、筑豊地域での炭鉱労働者の地道なネットワークを作っていた上野英信の活動が取りあげられていて、興味深かった。 副題には”交流と連帯のビジョン”とあるように、著者は、現在へのストレートな言及はないものの、1950年代の炭鉱労働者らによるサークル運動の直面した課題が、いま現在にも通じるものがあるというスタンスのようである。 ちなみに、”つまみ食い”であっても印象に残った箇所はいくつかあって、谷川や上野がそれぞれのパートナー(つまり森崎和江、上野晴子)に対し、表現しようとする活動を抑圧していたというくだりには考えさせられたな。 博士論文が下敷きとはいえ、けっして小難しい本ではないし、文章も読みやすい。膨大な「註」ともあわせて、関心のある向きには読書の幅が広がっていくであろう、得難い本である。
by t-mkM
| 2013-09-12 01:50
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