土曜日、例によって神保町へ出向いてひさしぶりに三省堂へと寄った後、ついでなので隣のビルにある「神保町古書モール」( by 古書かんたんむ)を覗いた。こちらもひさしぶりか。
ざっと流したあと、ふと思いたって四谷書房さんの棚を見てみると、新装復刊された『マイ・バック・ページ』川本三郎(平凡社)が目にとまる。これもなにかの縁かな?と、迷わずレジに持っていき、さっそく読んでみた。 (それにしても神保町というところ、あらためてスゴイところだなと実感した) この本、前半と後半とでは内容も雰囲気も大きく異なる。 川本氏は1969年、朝日新聞社に入り、出版局に配属されて駆け出しの雑誌記者となる。学生運動の盛り上がり(と急速な退潮)、ベトナム戦争といった世相を背景に、取材を通してカウンター・カルチャーの色濃い状況を垣間見ながら、そこで知り合った人たちの見せるいろいろな側面を回想していく前半部分は、当時を知らない(覚えてない)ワタクシのようなものにもその場の情景がリアルに伝わってくる。 ただこの本の重点は、取材で知った過激派Kとのやりとりを経て、Kが惹き起こす事件と自身のジャーナリストしての葛藤を吐露した後半だ。 映画『マイ・バック・ページ』は、この後半部分をもとにしたストーリーとなっているわけだけど、前半の回想部分からもいくつかのエピソードが挿入されている。この本の読書と前後して、あらためて映画のほうを見直してみて感じられたのは、よく練られた脚本だなということと、著者である川本氏に対する映画制作側のリスペクト。 この『マイ・バック・ページ』という本に対してはいろいろ批判もあるようだし、「取材源の秘匿」というジャーナリストの”大原則”をめぐる川本氏自身の苦悩や葛藤については正直、疑問を感じる部分が無いわけではない。 それでも、あくまで自分個人に問題をひきつけて、しかし感傷に流れることなくその頃の自分自身から距離をおきながら、当時の雰囲気も織り込んで描きだしている。ともすると、この手の題材は硬い表現になりがちだけど、自身の未熟さや青臭さをも否定せず、見つめなおしているように感じた。 そんなところもひっくるめて、映画『マイ・バック・ページ』は、川本氏への敬意とともに原作のもつニュアンスをうまく伝えているなと、感じられた。
by t-mkM
| 2014-02-03 01:14
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