少し前に早稲田松竹へ観に行ったK(かんから)が、ことあるごとに「傑作だー!」と繰りかえすので、ツタヤで久しぶりに新作DVDを借りて、観た。
『地獄でなぜ悪い』監督・脚本・音楽:園子温(2013、130分) 公式サイト:http://play-in-hell.com/
(以下、若干ネタバレしてます) 前半、いかにもありそうなパッとしない地方の風景をバックに、”うだつのあがらない映画青年”たちがツルみながら自分たちの映画愛をあれこれ示すシーンが、いやでも若かりし頃の園子温監督を思い起こさせる。そんな場面と平行して描かれる、対立しあうヤクザの抗争がどう絡んでいくのかと思いながら観てると、あれよという間にストーリーが暴走していき、後半の弾けぶりと疾走感とハイテンションは尋常じゃない。 しかも園監督の映画なので、グロいシーンも(とくに後半に)満載なのだが、娯楽作というだけあって、飛び散る血しぶきも吹き飛ぶ腕や首も、すべてが過剰でマンガチック。グロいシーンもここまで徹底的にやられると、逆にコミカルで笑える。 映画青年のひとりがブルース・リーを真似るところをはじめ、観ていると『キル・ビル』『ニュー・シネマ・パラダイス』『仁義なき戦い』『俺たちに明日はない』などといった映画が頭をよぎっていく。またヤクザの殴り込みシーンを35ミリ・フィルムで撮影したり、映画館や映写室がたびたび登場するなど、園監督自身による映画(フィルム映画?)へのオマージュとも言えるか。 映画ファンであるほど、「このシーンはあの映画のあそこか!」という場面が多々あるのでは。 また観ていてインパクトのあったのは、後半のハイライトである敵対するヤクザ同士が屋敷で斬り合う(殺し合う)場面の最後、さらなる上級の暴力によって強制的に抗争が沈静化させられること、それから最後の最後、映画青年のリーダーである平田が撮影したフィルムを抱えて走っていくシーンで「カーット」という制作側の声が入って映画が終わること。 前者は、なんというか良くも悪くも「いま」という時代を強烈に感じさせられたし、後者では「なーんちゃって。みーんな冗談だぜ」とも言われたような気がして、ニヤリとさせられる。 まあ、とにかく万人にはすすめられないし、観る人を選ぶ映画だとは思うけど、これぞまさしく園子温監督の王道(!)を行く映画ではないか。とりあえず、『愛のむきだし』がツボにはまった人には必見でしょう。
by t-mkM
| 2014-04-07 01:45
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