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園子温監督の『地獄でなぜ悪い』を観る

少し前に早稲田松竹へ観に行ったK(かんから)が、ことあるごとに「傑作だー!」と繰りかえすので、ツタヤで久しぶりに新作DVDを借りて、観た。

『地獄でなぜ悪い』監督・脚本・音楽:園子温(2013、130分)
 公式サイト:http://play-in-hell.com/

「愛のむきだし」「ヒミズ」の鬼才・園子温監督が、自身初の娯楽作と銘打つアクション活劇。ヤクザの組長・武藤は、獄中の妻しずえの夢でもある、娘ミツコを主演にした映画の製作を決意。「映画の神様」を信じるうだつのあがらない映画青年と、通りすがりのごく普通の青年を監督に迎え、手下のヤクザたちをキャ ストに映画作りを始める。しかし、対立する池上組の組長でミツコに恋心を抱く池上も巻き込み、事態は思いもよらない方向へと進んでいく。園組へ初参加となる國村隼が武藤役で主演。ミツコ役の二階堂ふみ、池上役の堤真一ほか、長谷川博己、星野源、友近ら個性的かつ実力派の俳優たちが集う。
↑「映画.com」の解説から http://eiga.com/movie/77514/

(以下、若干ネタバレしてます)
前半、いかにもありそうなパッとしない地方の風景をバックに、”うだつのあがらない映画青年”たちがツルみながら自分たちの映画愛をあれこれ示すシーンが、いやでも若かりし頃の園子温監督を思い起こさせる。そんな場面と平行して描かれる、対立しあうヤクザの抗争がどう絡んでいくのかと思いながら観てると、あれよという間にストーリーが暴走していき、後半の弾けぶりと疾走感とハイテンションは尋常じゃない。
しかも園監督の映画なので、グロいシーンも(とくに後半に)満載なのだが、娯楽作というだけあって、飛び散る血しぶきも吹き飛ぶ腕や首も、すべてが過剰でマンガチック。グロいシーンもここまで徹底的にやられると、逆にコミカルで笑える。

映画青年のひとりがブルース・リーを真似るところをはじめ、観ていると『キル・ビル』『ニュー・シネマ・パラダイス』『仁義なき戦い』『俺たちに明日はない』などといった映画が頭をよぎっていく。またヤクザの殴り込みシーンを35ミリ・フィルムで撮影したり、映画館や映写室がたびたび登場するなど、園監督自身による映画(フィルム映画?)へのオマージュとも言えるか。
映画ファンであるほど、「このシーンはあの映画のあそこか!」という場面が多々あるのでは。

また観ていてインパクトのあったのは、後半のハイライトである敵対するヤクザ同士が屋敷で斬り合う(殺し合う)場面の最後、さらなる上級の暴力によって強制的に抗争が沈静化させられること、それから最後の最後、映画青年のリーダーである平田が撮影したフィルムを抱えて走っていくシーンで「カーット」という制作側の声が入って映画が終わること。
前者は、なんというか良くも悪くも「いま」という時代を強烈に感じさせられたし、後者では「なーんちゃって。みーんな冗談だぜ」とも言われたような気がして、ニヤリとさせられる。

まあ、とにかく万人にはすすめられないし、観る人を選ぶ映画だとは思うけど、これぞまさしく園子温監督の王道(!)を行く映画ではないか。とりあえず、『愛のむきだし』がツボにはまった人には必見でしょう。
by t-mkM | 2014-04-07 01:45 | Trackback | Comments(0)


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