気がつけば3月もすでに後半。
年度末であるので、周囲でも定年などで一区切りつける方々を送る行事があったり、人の移動も多い時期でもある。まあ自分自身は関係ないんだけど、どことなく慌ただしいような雰囲気がある、今日このごろ。 さて、前回のエントリから間があいてしまったけど、このところ読んだ本から印象に残ったものを2冊。 『捏造の科学者 STAP細胞事件』須田桃子(文藝春秋、2014) 著者はこの問題を当初から追いかけていた毎日新聞・科学環境部の記者。 2014年1月、あの鳴りもの入りで行なわれた理研での記者会見からはじまって、すぐに湧き出た論文への疑義、STAP論文のどこが問題なのか、共著者たちへの度重なる取材、スクープを抜きつ抜かれつする同業他社との競争、匿名研究者による情報提供、ひろがる疑惑、”捏造”を疑わせる数々の調査結果、そして笹井氏の自殺…。 なんだかかなり時間がたったような感じだけど、こうして時系列にしたがう本書の記述であらためて振りかえると、たった一年前なんだよなぁ。 笹井氏をはじめ、共著者であった若山氏らとの取材やメールが明らかにされていて、当事者たちの当時の心境まで描かれているのが、本書の特徴だろうか。 読み終わってみると、「捏造の科学者」というタイトルが指し示すのは明らかである。なんだけれど、もうちょっと考えてみると、このタイトルに込められた意味はおそらくそれだけではないのでしょう。 理研はもとより、研究者たちにはこの後の対応こそが求められているように感じられた。 『離陸』絲山秋子(文藝春秋、2014)
上はアマゾンの内容紹介。 ネット上ではいまひとつの評価みたいだが、著者の新境地を感じさせる傑作だと思う。 ちなみに、本書は今年のツイッター文学賞【国内篇】の第5位。 http://matome.naver.jp/odai/2142526541168737201 まあ、作中での謎が最後までハッキリとは解き明かされず、村上春樹のような感じを抱かせる部分があったり、やや「ご都合主義的では?」と思わないでもない展開があったりはするけど、それらもふくめて新鮮で、”新境地”だと感じさせたし。 それより何より、雪にうまった群馬の八木沢ダムから、東京、パリ、イスラエル、四日市、八代、唐津、五島…、人と人との思いもよらないつながりから物語の舞台が移り変わっていく、そのさまが、読んでいてしみいるようで、それらの思いが集約されているかのラストが、とくに印象に残る。そしてさらに、参考文献を見ていても、物語の余韻がさらに広がっていくかのように思えてくる。 どうにもうまく言葉が見つからないけど、小説を読む醍醐味を味わえた、そんな感じを受けた一冊。
by t-mkM
| 2015-03-16 00:53
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