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多数決とは? そして一般意志って?

このところ本以外のネタがつづいているような気がするので、このへんで本のことも。
ここ最近読んだ本で、まさに「目ウロコ」だったのがこれ。

『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』坂井豊貴(岩波新書、2015)

以下はアマゾンの内容説明から(本書のカバー折り返しにある説明)。

選挙の仕組みに難点が見えてくるとき、統治の根幹が揺らぎはじめる。選挙制度の欠陥と綻びが露呈する現在の日本。多数決は本当に国民の意思を適切に反映しているのか? 本書では社会的選択理論の視点から、人びとの意思をよりよく集約できる選び方について考える。多数決に代わるルールは、果たしてあるのだろうか。

たしか、『中央公論』がやってる「新書大賞」でも上位に入っているなど、昨年出た新書のなかでも評価の高かった本のひとつ。それに「多数決を疑う」というタイトルからしてキャッチーだし、著者の文体も岩波新書らしからぬくだけた感じ。

「社会的選択理論」なんて言われると、なにやら小難しい感じを受けるけど、(そして実際、「社会的選択理論」それ自体は数学を駆使して証明をしていくなど、かなりややこしそうなのだが)その学問的な到達を、数学的な証明などはすっ飛ばしてかなり分かりやすく説いてくれる。

 多数決という意見集約の方式は、日本を含む多くの国の選挙で当たり前に使われている。だがそれは慣習のようなもので、他の方式と比べて優れているから採用されたわけではない。そもそも多数決以外の方式を考えたりしないのが通常だろう。だが民主制のもとで選挙が果たす重要性を考えれば、多数決を安易に採用するのは、思考停止というよりも、もはや文化的奇習の一種である。
(p5−6)

この本で「文化的奇習」とまで言われてしまう選挙での多数決。
そこから意見集約の方法として、ボルダルールからはじまって、スコアリングルール、コンドルセの方法、中位投票者定理、などなど、主に投票を例にとりながら説明されていく。

なにかと批判の多い小選挙区制だけど、これを読むと、単純に中選挙区制に戻せばいいというものでもない。また、いまの日本の憲法は「改正のハードルが高い」と言われているけど、民意という点から突き詰めて考えてみると、そのハードルはそれほど高くも無いことが説得的に示される。そして最後に出てくる「周波数オークション」、諸外国ではかなり導入されているようだけど、日本ではまだ。オークションという言葉から「たんなる商売の話か?」とも思ってたけど、さにあらず、民主的な制度のようである。日本では既得権益の大きさからか、導入が阻まれているようだ。

なかでも、これまでの思い込みを正されたのが、ルソーという人のこと。
『社会契約論』を記して民主主義の基礎を築いた、というのがルソーという人の学校的な説明だけど、この『社会契約論』はそんなもんではないらしく、二百年以上も前に書かれていながら、いまだ最前線で研究されている書物。キーワードは、『社会契約論』に出てくる概念で「一般意志」という有名なヤツだ。
第3章で、ルソーによる「少数派が多数決の結果に従う正当性の根拠(p81)」として説明がなされるのだけど、ここでは結論部分だけを引いておく。

 一般意志はあくまで個々の人間が、自らの精神のなかに見付けていくものだ。法の制定とはそのような行為であり、ある法案が一般意志に適うか否かを調べるためには、構成員全員が参加する集会で、各自が辿り着いた判断を投票で表明して、多数決で判定する。
 もう少し詳しく述べよう。投票に際して個々の構成員は、法案が一般意志に適うか否かへの自らの判断を、熟議的理性を行使したうえで表明する。そうした多数決により法案の一般意志への適否を判定するわけだ。よって、自分の判断と多数決の結果が異なっていても、それは自分の判断が間違っていたということになる。自分の意に沿わない結果が出たということではない。自分は一般意志の判断を見付け損ねていたのだ。
(p80)

これを読んで「へぇ」と思った。「なるほど」とも感じた。
けど、どこかに違和感も残る。フツーの感覚の持ち主ならそうだろうと思う。
じゃあ、ここで言われる「一般意志」というのを、もう少し考えようかと思い、この本を読み終わってつらつらと検索していたら、

『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』東浩紀(講談社文庫、2015)

という本が目についた。
2011年に出た単行本の文庫化らしいけど、その評判はというと、微妙な感じではある。
まあでもと思い、さっそく読んでいるところ。
さて、どんな提案が出てくるのやら。
by t-mkM | 2016-03-25 01:16 | Trackback | Comments(0)
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