暴力と家族の物語

なかなか重い中身ではあるけど、そこはエンタメ、ミステリであるので、リーダビリティ高く読ませる。とりわけ後半に入ってからの疾走感はハンパない感じ。

『熊と踊れ 上・下』(ハヤカワ・ミステリ文庫、2016)
 アンデシュ・ルースルンド、ステファン・トゥンベリ/ヘレンハルメ美穂、羽根由 訳

上下で1100ページを超える大作。
ハヤカワ・ミステリ文庫の創刊40周年記念作品なんだそうだが、読み終わってみて、それにふさわしいボリュームと中身だったように思えた。
以下はアマゾンの内容紹介から。

凶暴な父によって崩壊した家庭で育ったレオ、フェリックス、ヴィンセントの三人の兄弟。独立した彼らは、軍の倉庫からひそかに大量の銃器を入手する。
その目的とは、史上例のない銀行強盗計画を決行することだった――。連続する容赦無い襲撃。市警のブロンクス警部は、事件解決に執念を燃やすが……。
はたして勝つのは兄弟か、警察か。スウェーデンを震撼させた実際の事件をモデルにした迫真の傑作。最高熱度の北欧ミステリ。


実際にあった事件をモデルにしたとあるけど、訳者によるあとがきを読むと、本書の内容はかなり事実に沿っていることがわかる。しかも、著者の一人であるトゥンベリは、犯人グループの一人の弟で、兄から犯行を誘われたものの、断ったらしい(!)。
本書は著者の二人が2年がかりで討論の末に書き上げたそうだけど、 犯人側の心情をはじめとして、描写がえらくリアルなのは、そんな事情が反映しているのかも。

それにも増してあとがきで驚いたのは、本書を犯人グループの兄弟にも実際に読んでもらい、感想をもらっていること。本編を読了してから、このあとがきを読むと、なんとも言えない感慨がわいてくる。なんだろう、既視感とでもいうか。

暴力と家族の物語、もっというと、暴力に絡めとられてしまった家族の物語、だろうか。
北欧というとイメージするのは、福祉国家で、寒いけど経済もそれなりに成長していて、うまくいってる国々、ってところかな。でも北欧ミステリを読んでいると、わりと暴力を背景としたものが多いような気がする。先日読んだ『その雪と血を』ジョーネスポ(ハヤカワ・ミステリ)とか、そういえば『ミレニアム』シリーズだって暴力のシーンは多かったし。

一方で、そうした暴力を描くだけでなく、対する捜査側、警察側の人間にもワケありな過去をもつ人物を配して、その人物(警部)に暴力の負の側面を語らせたりと、幾重にも奥行きがある。
この警部の過去がハッキリ書かれていないところからすると、おそらく続編があるんだろうな。


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by t-mkM | 2017-08-31 01:37 | Trackback | Comments(0)
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