一気に読んだ『夜の谷を行く』

以前、『文藝春秋』で連載が始まったことを知り、単行本にまとまったことから図書館にリクエストし、忘れた頃にようやく順番が回ってきた。
で、さっそく読んでみた。

『夜の谷を行く』桐野夏生(文藝春秋、2017)

なんと言ったらいいか、いやーな感じが満載なんだけど、引き込まれて一気に読んだ。面白い。
「桐野夏生って、こんなに読みやすかった?」と感じるほど、リーダビリティが高い。前に読んだ東日本大震災を題材に取った『バラカ』は、手を広げすぎて中途半端な印象を受けたけど、こちらは特定のテーマを集中し、読んでいる途中でも、さまざまな思いがアタマの中を行ったり来たり。今回は、桐野夏生にやられた感がある。

以下はアマゾンの内容紹介から。長いけど、貼っておく。

連合赤軍がひき起こした「あさま山荘」事件から四十年余。
その直前、山岳地帯で行なわれた「総括」と称する内部メンバー同士での批判により、12名がリンチで死亡した。
西田啓子は「総括」から逃げ出してきた一人だった。
親戚からはつまはじきにされ、両親は早くに亡くなり、いまはスポーツジムに通いながら、一人で細々と暮している。かろうじて妹の和子と、その娘・佳絵と交流はあるが、佳絵には過去を告げていない。
そんな中、元連合赤軍のメンバー・熊谷千代治から突然連絡がくる。時を同じくして、元連合赤軍最高幹部の永田洋子死刑囚が死亡したとニュースが流れる。
過去と決別したはずだった啓子だが、佳絵の結婚を機に逮捕されたことを告げ、関係がぎくしゃくし始める。さらには、結婚式をする予定のサイパンに、過去に起こした罪で逮捕される可能性があり、行けないことが発覚する。過去の恋人・久間伸郎や、連合赤軍について調べているライター・古市洋造から連絡があり、啓子は過去と直面せずにはいられなくなる。
いま明かされる「山岳ベース」で起こった出来事。「総括」とは何だったのか。集った女たちが夢見たものとは――。啓子は何を思い、何と戦っていたのか。
桐野夏生が挑む、「連合赤軍」の真実。


読み終わってみると、カバーの装幀が内容を象徴的に表している気がする。
赤黒の重く沈んだトーンの写真。写っているのは駅前とおぼしき駐輪場に停められた自転車の連なり。その真ん中に、白字で「夜の谷を行く」という詩的なタイトルが浮かんでいる。そのコントラストが、"俗な現在と遠い過去の封印してきた記憶"との対比のように感じられた。

作品では、主人公・啓子が、自身が関係した「山岳ベース事件」のことを、妹の娘である佳絵に話すシーンや、かつてその「山岳ベース」から一緒に脱走した昔の仲間を訪ねてのやりとりなど、小説の白眉とも言える会話シーンが印象に残る。何というか、いろんな意味で身につまされたとでもいうのか、ズッシリくる感じ。

ラストで衝撃の事実が明かされる。
これはまあ、エンタメとしてのオチとしては致し方ないのかもしれないけど、やや拍子抜けな感じがしないでもない。ただでも、このあと、啓子はどんな対応をするのだろうか? それを想像してみると、啓子がどういう行動を取るにせよ、過去が自分自身へ突きつけてくるものと対峙せざるを得ないことは明らか。

ちなみに、「山岳ベース事件」の詳細はウィキペディアにも載っているし、若松孝二監督の映画『実録・連合赤軍』でも描かれている。(関係するシーンは、画面を見てるのがツライけど…)映画を見てから読むと、時代背景も含めてよく分かるかも。ただその分、ぐったりする可能性も大きいだろうけど…。


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by t-mkM | 2018-03-09 01:52 | Trackback | Comments(0)
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