桟敷童子『翼の卵』観てきた

ヒグラシ文庫から引き上げてきた本、これがなかなかあって…。
せまいわが家にとって、この本たちを「そのまま」にしておくわけにはいかない。なので、これまで"お蔵入り"していた蔵書ともあわせて、せっせと片付け。

ン十年前の若い頃であれば、「これから読むかも」として取っておけた。が、しかし。
もはやこの年になってくると、同じ本を手にとっても「もう読まないだろうなぁ」という思いがよぎる本のほうがダンゼン多い。こういうところからも、年を取ったことを実感させられる。いやはや。
ま、もはやあんまり物欲もなくなっているせいか、「これを集めたい」とか、「あれを持っておきたい」なんてことは思わないので、それほど葛藤はないのだけど。

ただまあ、本は整理するにしても、現在と関わっていく心持ちまで処分しちゃうと、さすがにマズい。
ということで、劇団桟敷童子の新作を観てきた。
以下、ステージナタリーからのコピペ。
https://natalie.mu/stage/news/281745

劇団桟敷童子『翼の卵』
2018年5月29日(火)~6月10日(日)
東京都 すみだパークスタジオ倉

作:サジキドウジ
演出:東憲司
美術:塵芥
出演:原田大二郎、板垣桃子、原口健太郎、稲葉能敬、鈴木めぐみ、坂口候一、松本亮、鈴木歩己 ほか

本作は昭和時代の家族を描く回想録。頼子(板垣桃子)は、娘の恵子(大手忍)と共に、再婚相手の篠塚毅彦(坂口候一)に連れられ彼の実家へやって来た。そこにいたのは、陰鬱で無関心な篠塚家の家族たちと、土木業・浦部組の個性豊かな面々だった。その中の1人・常藤耕作(原田大二郎)と頼子たちの交流が始まり……。
なお劇団桟敷童子は昨年2017年に上演した「蝉の詩」と「標~shirube~」の舞台美術が評価され、第25回読売演劇大賞で優秀スタッフ賞を受賞。本作は受賞後初の本公演となる。


劇中、セリフに「昭和49年」と出てくる。となると1974年。
1972年に浅間山荘事件があり、その後、オイルショックを経て、物価高に直面していた頃か。舞台では篠塚家の三男が、8月の日付をカウントしており、ちょっと調べると三菱重工ビル爆破事件は1974年8月30日。すると、舞台はその前後となる。
はるか彼方の記憶をさぐれば、この頃、世相も暗かったような気がする。

冒頭、(この劇団にしてはまれだと思うけど)乱闘の暴力シーンで始まる。
舞台は九州、炭鉱のある町のそば。国のエネルギー政策で炭鉱も閉鎖され、人々の生活も変わらざるを得ない。
ストーリーは、頼子と娘の恵子を中心に、浦部組でアニキと慕われている常藤が絡んで進んでいく。
実家の実権をにぎる母親からはこき使われ、はては再婚相手からは暴力をふるわれる。不況による失業、先の見えなさ。娘・恵子もが…。

ハッキリ言って、ずいぶんと救いようのない話しの連続で、でもまあ、当時ではありふれた家族の話だったのかもしれない。そんな中で、頼子と恵子がくりかえし口にする詩が、耳に残る。
(この詩、会場で配布されたチラシにもある)

なめくじがかたつむりの子供だと思っていたころ…

ああ、わたしは翼をもっていたんだよ

くわがたとかぶとむしが兄弟だと思っていたころ…

ああ、わたしは翼をもっていたんだよ

かたてにぴすとる、くちびるにちゅーいんがむ

失敗と失望と、ふんだりけったりをくりかえし

じゅん愛と打算と、恥知らずをくりかえし

卑怯と狡猾と、口だけに成り下がり

逃避と怠惰と、見て見ぬふりの臆病に成り下がり

ああ、わたしは翼をもっていたんだよ

ああ、わたしは翼をもっていたんだよ

さらば世界よ…

けっこう陰惨なシーンが続き、「この舞台、どうやって着地するんだ?」と思っていたら、最終盤、頼子と常藤とが対峙する場面(この張りつめた緊張感はスゴかった)、いやー、この舞台セットをそうやって使うかぁ、という「押し寄せる感」はハンパなかった。ラストでの過剰とも言える演出とも相まって、一気にグッときた。
「さらば世界よ」か。

原田大二郎、その存在感は大きく、さすが。でも、客演の役者はもちろん、劇団の役者陣もそれぞれにウマい。とくに頼子を演じた板垣桃子、劇団の看板女優ではあるけど、今回、あらためて「すげえな」と思いましたね。

この日、終演後に談話会があり、客演した原田大二郎と鈴木歩己、そして東憲司の3名に司会が劇団で舞台にも出ていたもりちえ、という面々で15分ほど。原田大二郎、74歳だとか。いやぁ、若いね。

すでにチケットは完売らしいけど、オススメ。


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by t-mkM | 2018-06-06 01:38 | Trackback | Comments(0)
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