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最近の2冊

まずは、第160回芥川賞受賞作であるこれ。

『1R1分34秒』町屋良平(新潮社、2019)

以下はアマゾンの内容紹介。

デビュー戦を初回KOで飾ってから三敗一分。当たったかもしれないパンチ、これをしておけば勝てたかもしれない練習。考えすぎてばかりいる、21歳プロボクサーのぼくは自分の弱さに、その人生に厭きていた。長年のトレーナーにも見捨てられ、現役ボクサーで駆け出しトレーナーの変わり者、ウメキチとの練習の日々が、ぼくを、その心身を、世界を変えていく―。

読んだのは単行本ではなく、『文藝春秋』2019年3月号に掲載された本作を選評とともに読んだ。
一言でいうと「なんだかちょっと新しい次元の小説を読んだ」感じ。

主人公に名前はない。登場人物の誰もがまともに名前が与えられていない。トレーナーは「トレーナー」だし、友人は「友人」だし。
とはいえ、4回戦のプロボクサーとしての練習の日々が、かなり緻密に描かれる。なにせ、対戦相手の試合の映像を繰り返し見て、果ては対戦相手にも関わらず、バーチャルには友達になってしまうのである。あくまで一方的にではあるが。そんな主人公の、じつにイケてない屈折した内省ぶりが、ボクシングにおける身体や思考の動きとともに描かれる。この、身体感覚の表現が読ませる。ボクシングを知らなくてもいいけど、知っていればより楽しめる(ダッキングとかウェービングとか出てくるし)。


それから、まだ出たばかりのこれ。

『「糖質過剰」症候群』清水泰行(光文社新書、2019)

以下はアマゾンの内容紹介。

肥満や糖尿病は、糖質が原因と認知されつつあるが、その他の多くの疾患も、元をたどれば一つの原因につながる―糖質の過剰摂取である。医療の現場ではまだ少数派の考え方だが、研究成果は世界中で報告され始めている。著者は七千を超える論文を参照しつつ、「糖質過剰症候群」という新しい概念を提唱。裏付けのある形で様々な疾患と糖質過剰摂取との関係を説く。

糖質とは、簡単にいうと炭水化物から食物繊維を抜いたもの。
副題に「あらゆる病に共通する原因」とある。そのタイトルどおりに、肥満や糖尿病のほか、心筋梗塞、アルツハイマー、緑内障、非アルコール性脂肪肝、不妊からうつ病、偏頭痛などの痛み、などなど、広範な病気や痛みの原因には糖質の過剰摂取がある、という主張を展開する。

節ごとにいちいち根拠となる(のだろう)医学の参考文献が挙げられており、なんだか専門書のようだけど、文章はそれなりにこなれていて、専門用語もかみくだいて説明されるし、読みやすくはなっている。

これでもか、と突きつけられると、「まあ、それじゃあ」と実践してみたくなるけれど、糖質制限するのは、これがなかなか難しい。コンビニやスーパーなど、周りにあふれる飲食物は、弁当やおにぎりなど、手軽に購入できてすぐに食べられるものほど糖質が主体のものばかりだし。
糖質制限食について、さらに納得を深めるための本、かな。



by t-mkM | 2019-07-29 01:36 | Trackback | Comments(0)


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