上下巻の文庫本。現在の東京が舞台のサスペンスのようで、書評家の大森望氏が、どこかの雑誌で推薦していたこともあり、手に取った。
『泥の銃弾(上・下)』吉上亮(新潮文庫、2019) 4月の新刊で文庫オリジナル。 読もうと思った理由のひとつには、『PSYCHO-PASS GENESIS』シリーズを書いた作家の新作、ということもある。 以下はアマゾンの内容紹介から。上が上巻で、下が下巻のもの。 都知事、狙撃──。新国立競技場で起きた事件は日本を震撼させた。誰が。なぜ。狂騒の中、日就新聞社会部の天宮理宇はチームを率いて真実を追うが、捜査は唐突に打ち切られる。「犯人はクルド人難民」その警察発表は国策として難民を受け入れた日本において、瞬く間に浸透した。結論ありきの手法に違和感を覚えた天宮は社を去るが……。この国の未来を予見する圧倒的エンターテインメント! 下巻の方が厚くて、値段もちょっと高い。 ま、それはいいんだけど、新聞記者からフリーのジャーナリストとなった天宮を中心に、上巻まではしだいにサスペンス度が上がっていくし、下巻に至って途中でさしはさまれる当事者の目線によるシリアでの戦争(というかほとんど内戦)の描写には、息がつまるようなシーンの連続ではある。 また、難民をめぐる日本政府の対応や、それを2020東京オリンピックと絡めて小説にするところなど、目のつけどころとしてありそうでなかった視点だし、舞台が現在(から2020年)の東京なので、リアル感も増している。 …なんだけど、下巻も後半になってくると、アクションシーンの迫真さが増すほどには、主要人物の心情や思考がいろいろ展開していくさまに、いささかついていけないものを感じてくる(のは私だけだろうか?)。 ふと、『本の雑誌』2019年8月号の「特集:2019年 上半期ベスト1」をパラパラみていたら、この『泥の銃弾』もランクインしているのだけど、この本を推薦した人の弁で、「後半になると構成が洗練されていないというか…」とのコメントがあって、まあそうかもねぇ、とも感じた。 著者の熱量が十二分に感じられるものの、それがうまく読み手には伝わってこないもどかしさが、最後まで残るんだよなぁ。それがちょっと残念ではある。 蛇足だけど、たとえば難民をめぐる問題に関してEUでの教訓などから今後の日本ではどうすべきか? などを考えるのに、最後の参考文献リストは重宝するかも。
by t-mkM
| 2019-09-13 01:32
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