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戦争の影

いつものように、遅れて雑誌をパラパラと見る。
今回は『小説新潮』7月号。特集は「人情紙風船」とあるけれど、それは置いておいて、佐藤優の連載「功利主義者の読書術」第3回。

今回の題材はというと、レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』。
もちろん、この時期なので、清水俊二訳の『長いお別れ』と、村上春樹訳の『ロング・グッドバイ』の読み比べです。

佐藤氏によれば、村上訳によって、
「清水訳では読者が気付くことのないであろう、作品の背後にある闇が浮かび上がってくる。」
としています。
では、その闇とはなんなのか。
それは、戦争の影、だというのです。

佐藤氏は、村上春樹が『ロング・グッドバイ』の解説で書いていた、”翻訳も古くなれば家屋と同じように改築・新築が必要”という論を引き合いに出しながら、それとは違う翻訳の動機を、この「戦争の影」に見ています。

...清水訳を読んで感じた奥行き不足について、それを補うテキストを読者に提供するという欲望が翻訳の動機であると筆者は見ている。

村上訳については、すでにいろいろな方がコメントを寄せていますけど、戦争との関連について言及しているのは、見たことがありませんでした。

それにしても、佐藤氏の読書の守備範囲の広いこと。
by t-mkM | 2007-08-01 23:53 | Trackback(1) | Comments(2)
Tracked from 国際政治を探る言葉 at 2007-08-21 09:28
タイトル : 佐藤優の見るハニートラップ
「ハニートラップの要諦は、 ほんものの恋愛に介入し、恩を売り、 工作対象者が自らが所属する組織の 誰にも相談できないような状況を作り出すことだ。 逆に言えば、工作対象者が、不利益を覚悟してでも、 自...... more
Commented by ぎんこ at 2007-08-02 23:00 x
 こんばんは。
最近「ロング・グッドバイ」を読みました。「長いお別れ」は読んだことありません。確かに言われてみれば「戦争」というものが物語のキーワードになってますね。今でゆーとPTSDみたいな感じの人物も出てきますし。旧訳の方を読んでないので、比べようがないですが…。
Commented by t-mkM at 2007-08-03 00:25
ぎんこさん、こんばんは。
『長いお別れ』はだいぶ昔に読んだのですが、中身はもはや、よく覚えていなくて...。ただ、読んでいて「戦争の影」は感じられませんでしたね。原書の刊行時期が1953年ですから、戦争との関連が読み取れても不思議ではないですが。


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