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坪内祐三の『東京』を読んで、頷く

ようやく、久しぶりの、秋晴れ。
こういう陽気が続いてほしいなぁ。

このところ少しづつ読み進んでいる、坪内祐三の新刊『東京』(太田出版)。
ルポではなく、かといって単なる身辺雑記でもないし、小説でもない、なんと言っていいのか。

記憶をあちこちにたどりながら、自らの体験を、東京のさまざまな場所における細部の変遷とともに文章へと焼き付けていく。その語り口が独特で、少し読んではちょっと休み、また本にもどる、ということを繰り返している。

読んでいると、こんな文章が出てきて、「そうそう」と頷く。

 池袋の改札を出て、別の電車に乗り換えようとしたり目的の場所に行こうと思ったりする。ターミナル駅であるから凄い混雑だ。
 その雑踏での人の波の動線が私にはつかめない。これでもいちおう池袋駅利用歴三十年以上になるのだが、まだ、つかめない。
 新宿駅の動線はつかめる。
 それは単に慣れの問題ではないと思う。
 たぶん池袋ならではの田舎性にある、と言ったら私の偏見になるだろうか。

このあと、池袋パルコの話しへとつながっていく。そこまで引用するのが誤解のないやり方だとは思うのだけど、池袋駅でワタクシがいつも思っていることと同じことが書かれていたので、(長くならない範囲で)あえて引いてみた。


東京に出てきてすでに二十年近くになるけど、坪内氏とおなじく、いまだに池袋駅で地下鉄やJRの改札を出ると、あの雑踏の人波にのれず、往生することがよくある。

なんでだろう。
他の駅と比べて動線が悪い、という側面もたしかにあるだろうけど、他のターミナル駅と比べても、無秩序さが際だっているような気はする。

そのほか、早稲田のところでは、こんな文章も。

 その頃の私は変装や、風変わりなパフォーマンスをすることが好きだった。
 ある日私は度の入っていない学者眼鏡(おっさん眼鏡)を見つけた。
 その眼鏡をかけると案の定おっさん顔になった。
 髪の毛とヒゲ(当時の私は口ひげを伸ばしていた)を少し白く染めてみたら、さらにおっさんになった。
 地味なYシャツを着て、父の洋服箪笥にあった一番しょぼいグレーのズボンをはいた。祖父の形見であるステッキを手にした。
 そして大学(早稲田大学文学部キャンパス)に向かった。

この後の展開は、笑えて少ししんみりする。
by t-mkM | 2008-10-02 23:53 | Trackback | Comments(0)


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