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2019年 07月 31日 ( 1 )

もう一つの芥川賞受賞作

ということで。

『ニムロッド』上田岳弘(講談社、2019)

第160回芥川賞受賞作。
同時受賞の町屋良平『1R1分34秒』と同じく、2つの受賞作が掲載された「文藝春秋」2019年3月号で読んだ。もちろん選評も。

以下はアマゾンにある内容紹介から。

それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。 あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。すべては取り換え可能であったという答えを残して。

アマゾンのカスタマーレヴューを見ると、意外と評価が低い。全体の1/3は星一つだし。
けっこう厳しいんだなぁ。ワタクシ的には面白かったけど。

作中で3つのエピソードが並行して進むところが、全体としてとっ散らかった印象を与えてしまうという面はあるかもしれない。ラストで恋人がどうなったのかもよくわからないし。
その一方で、ビットコインを扱っているという部分を差し引いても、「いま」を強く感じさせるし、後半のスケールはなかなか壮大でもある。

産経ニュースのネット記事によれば、選考委員の奥泉光氏から本作に対して次のようなコメントがあったそうだ。

人類が積み重ねてきた営為がもう終わってしまうかもしれないことへの愛惜がにじむ作品だと感じました
https://www.sankei.com/life/news/190116/lif1901160042-n1.html

たしかに、そうも言えるかな。
第160階の芥川賞、2作受賞で、それぞれに(ワタクシにとっては)面白く、また新しさを感じさせる小説でありました。



by t-mkM | 2019-07-31 01:50 | Trackback | Comments(0)