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『素敵なダイナマイトスキャンダル』を観た

年度末、あれよという間に桜も満開。…を通り過ぎてしまい、すでに花びらの陰に葉っぱがちらほら見えるくらい。もはや花見はこの週末で終わりか。

今週は初っぱなから職場での移転作業があり、居室以外で受け持っている部屋もあるために、いやはやもう大変。とりわけここ数日は、移転荷物の置き場所の細かい指示などで移転担当の業者に付き合っていなくてはならず、まったく仕事にならない。昨日、移転先の居室の片付けもようやく一段落して、ようやく仕事を再開したところ。

その間、週末には映画を2、3本観たのものの、時間がないため感想を書けてなかったのだが、先週末に観た『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、それなりに面白かった。
以下、シネマトゥデイの見どころから。

雑誌「ウイークエンドスーパー」「写真時代」などの編集長として知られる末井昭の自伝的エッセイを映画化。幼少期に母親が自殺するという衝撃的な体験をした末井が、伝説の雑誌編集長として活躍するまでの波乱の半生を描く。昭和のサブカルチャーをけん引したカリスマを、柄本佑が体現。『パビリオン山椒魚』などの冨永昌敬が監督を務め、音楽を冨永監督と『パンドラの匣』などでタッグを組んだ菊地成孔が手掛ける。

映画は、末井氏が子どもの頃、1950年代から60年代、80年代のバブル期から平成までが描かれる。冒頭、70年代の喫茶店での描写が出てくるんだけど、タバコの煙で店内が煙って向こうが霞んでいるところなど、当時の雰囲気がじつに濃厚に再現されていて、この"昭和感"は、当時を知っている身としては、じつに興味深かった。

なんといっても、主演の柄本佑がいい。
現実の末井氏に似ているらしいが、高校卒業後に都会へ出て、あっちこっちと仕事を変わりながらも、雑誌業界で頭角を現していくさまを、私生活の変化やバブル期の狂騒も交えながら、好演している。当時、目論みもなく都会に出て、偶然にも恵まれて仕事を得ていった若者というのは、大勢いたんだろうなぁ。いまとなっては「何にも考えてないよな」とも感じるけど、この変化こそが、デフレが20年以上続いた弊害でもあるのでは、と思わされる。
一方、幼少期に母親がダイナマイトで爆死するという体験を抱えている故なのか、所々で投げやりというか虚無とでもいえばいいか、そんな印象を感じさせる側面も覗かせ、末井昭という人物の奥底に何があるのか? といったものを感じさせもする。

観たのはテアトル新宿。
客層としては中高年が中心で、男性が多い。ま、エロ雑誌編集者が主人公なんだから、それも当然か。
ただまあ、この映画については、60年代、70年代で"新宿"というエリアが持っていた独特の雰囲気が、より感じられるところはあるかも。

ということで、観るなら新宿がオススメ。


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by t-mkM | 2018-03-29 01:21 | Trackback | Comments(0)

久しぶりの下北沢で椿組『毒おんな』を観る

先週末、ひさしぶりに下北沢へ。
数年ぶり? いやもっと? とにかく、久々である。小田急が地下化してからは駅を降りるのは初めて。

それにしても、駅はすっかり様変わりしたものの、街の感じは以前と変わらない印象。個人経営のような小さな店が、入りくんだ通りに並んでいる。「「ニーチェの馬」なんていうのが店名になるなんて、シモキタくらいでは?」とは同行者の弁。
で、この日、スズナリで椿組の舞台を観るために来たのである。偶然にも、知り合いのM夫妻らと同じ日、同じ回で舞台を観ることに。

椿組2018年春公演
『毒おんな』
作:青木豪 演出:高橋正徳(文学座)
2018年3月2日(金)~14日(水)18ステージ 下北沢ザ・スズナリ

それにしても、キョン^2だ。つい最近でもTVドラマで見ていた、あの小泉今日子が椿組の舞台、それも200人超の小劇場クラスの舞台に出るとは。いやもう、ただ驚きである。

会場は200人も入れば満席のキャパで、そこに補助イスまで出て超満席。今回、相方がいち早くネットで申し込んだせいか、舞台から自由席を経て一番前の座席で観ることに。

舞台は北海道の酪農農家。旅館?も営んではいるものの、一族経営の零細で、ボケた親を抱える酪農家夫婦と従業員、獣医や近所の居酒屋店主など、酪農家をとりまく人々も出てくる。その夫婦の叔父で輸入食材店を手がける役が、椿組の主宰者・外波山さん。今回、この外波山さんがなかなかいい味出していたのが印象的。小泉今日子とも、「老いらくの恋」で絡んでくる。

それにしても、小泉今日子!いやー、もう感服いたしました。
決して目立つというわけではない。けど、まとう空気が違っている、とでも言うか。
「オーラ」なんていうコトバは使いたくないけど、外波山さんはじめ、椿組の役者陣や客演の二人など、皆それぞれにウマいし熱演なんだが、明らかにほかの皆さんとは一線を画す何かが、キョン^2にはあった。手練手管を駆使して男たちをダマし、金を出させ、密かに消えていく…。そんな不気味でミステリアスな役どころを、物語の進展にあわせ、微妙に印象を変えながら演じる。舞台女優として十二分に存在感が感じられた。しかも、ラストの至っての展開がこれまたブラックなこと。

アイドル時代から芸能界で一線を張ってきたからなのか、それとも自身の鍛錬のたまものか、その辺は分からないけど、役者・小泉今日子のスゴさを、最前線の客席で堪能した2時間であった。


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by t-mkM | 2018-03-13 01:55 | Trackback | Comments(0)

一気に読んだ『夜の谷を行く』

以前、『文藝春秋』で連載が始まったことを知り、単行本にまとまったことから図書館にリクエストし、忘れた頃にようやく順番が回ってきた。
で、さっそく読んでみた。

『夜の谷を行く』桐野夏生(文藝春秋、2017)

なんと言ったらいいか、いやーな感じが満載なんだけど、引き込まれて一気に読んだ。面白い。
「桐野夏生って、こんなに読みやすかった?」と感じるほど、リーダビリティが高い。前に読んだ東日本大震災を題材に取った『バラカ』は、手を広げすぎて中途半端な印象を受けたけど、こちらは特定のテーマを集中し、読んでいる途中でも、さまざまな思いがアタマの中を行ったり来たり。今回は、桐野夏生にやられた感がある。

以下はアマゾンの内容紹介から。長いけど、貼っておく。

連合赤軍がひき起こした「あさま山荘」事件から四十年余。
その直前、山岳地帯で行なわれた「総括」と称する内部メンバー同士での批判により、12名がリンチで死亡した。
西田啓子は「総括」から逃げ出してきた一人だった。
親戚からはつまはじきにされ、両親は早くに亡くなり、いまはスポーツジムに通いながら、一人で細々と暮している。かろうじて妹の和子と、その娘・佳絵と交流はあるが、佳絵には過去を告げていない。
そんな中、元連合赤軍のメンバー・熊谷千代治から突然連絡がくる。時を同じくして、元連合赤軍最高幹部の永田洋子死刑囚が死亡したとニュースが流れる。
過去と決別したはずだった啓子だが、佳絵の結婚を機に逮捕されたことを告げ、関係がぎくしゃくし始める。さらには、結婚式をする予定のサイパンに、過去に起こした罪で逮捕される可能性があり、行けないことが発覚する。過去の恋人・久間伸郎や、連合赤軍について調べているライター・古市洋造から連絡があり、啓子は過去と直面せずにはいられなくなる。
いま明かされる「山岳ベース」で起こった出来事。「総括」とは何だったのか。集った女たちが夢見たものとは――。啓子は何を思い、何と戦っていたのか。
桐野夏生が挑む、「連合赤軍」の真実。


読み終わってみると、カバーの装幀が内容を象徴的に表している気がする。
赤黒の重く沈んだトーンの写真。写っているのは駅前とおぼしき駐輪場に停められた自転車の連なり。その真ん中に、白字で「夜の谷を行く」という詩的なタイトルが浮かんでいる。そのコントラストが、"俗な現在と遠い過去の封印してきた記憶"との対比のように感じられた。

作品では、主人公・啓子が、自身が関係した「山岳ベース事件」のことを、妹の娘である佳絵に話すシーンや、かつてその「山岳ベース」から一緒に脱走した昔の仲間を訪ねてのやりとりなど、小説の白眉とも言える会話シーンが印象に残る。何というか、いろんな意味で身につまされたとでもいうのか、ズッシリくる感じ。

ラストで衝撃の事実が明かされる。
これはまあ、エンタメとしてのオチとしては致し方ないのかもしれないけど、やや拍子抜けな感じがしないでもない。ただでも、このあと、啓子はどんな対応をするのだろうか? それを想像してみると、啓子がどういう行動を取るにせよ、過去が自分自身へ突きつけてくるものと対峙せざるを得ないことは明らか。

ちなみに、「山岳ベース事件」の詳細はウィキペディアにも載っているし、若松孝二監督の映画『実録・連合赤軍』でも描かれている。(関係するシーンは、画面を見てるのがツライけど…)映画を見てから読むと、時代背景も含めてよく分かるかも。ただその分、ぐったりする可能性も大きいだろうけど…。


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by t-mkM | 2018-03-09 01:52 | Trackback | Comments(0)

週末に観た映画、2本

先週末、我が家にしては超めずらしく、公開中の映画を2本、土曜、日曜と続けて観た。

まずは土曜日、『グレーテスト・ショーマン』。
観たのは、初体験のTOHOシネマズ上野で。何はともあれ、自転車で行ける映画館、というのがいいな。

13時半ころの回で、客席はほぼ満席。ハッキリ言って、まったくのノーマークではあったけど、「これぞハリウッド映画の王道」といった感じで、大画面と大音響を目一杯楽しめた。お客が集まっているのもよく分かる。
以下はヤフー映画による解説から。

19世紀に活躍した伝説のエンターテイナー、P・T・バーナムを『X-MEN』シリーズや『レ・ミゼラブル』などのヒュー・ジャックマンが演じるミュージカル。空想家の主人公が卓越したアイデアと野心で世界中を熱狂させるさまと、ロマンチックな愛の物語が描かれる。監督はマイケル・グレイシー。ミシェル・ウィリアムズやザック・エフロンらが共演。『ラ・ラ・ランド』で第89回アカデミー賞歌曲賞を受賞した、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが音楽を担当している。

P.T.バーナムはアメリカでは有名な興行師で、いかがわしい側面もあったようだけど、そんな感じもふくめて絶妙に描かれている。なにしろ、ストーリー展開のテンポが早い。とくに前半、説明的なセリフなど一切抜きで、バーナムの前半生と人となりを描写してしまうところなど、映像はもちろん、脚本の巧さも光る。これでもか! というくらいの情報量だけれども、まったく消化不良を起こさせることなく、歌とダンスで耳目を集めながら随所で泣かせ、しかも105分でまとめているのは見事と言うほかない感じ。

見終わると、主題歌?である「This is me」がアタマの中をリフレインしている。


そして日曜日は『スリー・ビルボード』。
日比谷のTOHOシネマズシャンテにて。

16時過ぎの回で、こちらも客席はほぼ満席だった。アカデミー賞ノミネート作品で、前評判もいいようだし、それがそのまま客数に反映している感じ。
以下、ヤフー映画によるあらすじ。

ミズーリ州の田舎町。7か月ほど前に娘を殺されたミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)は、犯人を逮捕できない警察に苛立ち、警察を批判する3枚の広告看板を設置する。彼女は、警察署長(ウディ・ハレルソン)を尊敬する彼の部下や町の人々に脅されても、決して屈しなかった。やがて事態は思わぬ方へ動き始め……。

結局、アカデミー賞ではミルドレット役が主演女優賞、警官のディクソン役が助演男優賞を受賞したようで、これからさらに観客が増えるのかも。

原題は「THREE BILLBOARDS OUTSIDE EBBING, MISSOURI」。
このミズーリ州という、中西部の州名が入っているのがミソか。非白人への差別感情を隠さない警官が大手をふり、家庭はもちろん警察官によってすら暴力的な言行が日常茶飯事な日々。こんな田舎町にとつぜん現れた、警察署長を批判する3つの意見広告(スリー・ビルボード)と、その意見広告を出した人物であり、娘をレイプされて殺された母親の、脇目も振らない行動もあって、物語が思わぬ方向へと転がっていく。

アカデミー賞をとっただけあって、主人公のミルドレッドの存在感が圧倒的。対立する警察官のディクソンも、特に後半からラストへと至るなかでの変貌ぶりには目を見張らされる。
予想もされない展開が次々と起こるし、何気ないシーンも、後から思うと意味深な場面にも思えてきたり、画面のテンションがずーっと高いままで緊張感がある。と思いきや、ジョークめいた場面がさりげなく出てたり。

なかなか感想がまとまらないのだけど、さまざまに事態が変転してきた末のエンディングが絶妙で、深ーく余韻を残す。「ラストで世界的な課題へと繋がる」といった評論を聞いたけど、まさしくそのとおりかと。
観る度に発見のある映画、のように思えた。


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by t-mkM | 2018-03-07 01:45 | Trackback | Comments(0)