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菊地成孔・大友良英DUO @新宿PIT INN(2018.12.24)

このところ本が読めていないので、本関連では書くことが無いんだが。
で、数少ない我が家の年末イベントで、前売りチケット買って楽しみにしていたものが終わったので、以下メモ的に。

 菊地成孔 3DAYS デュオ with 大友良英
 2018年12月24日(夜の部) 新宿PIT INN
 開場19:30 開演20:00

http://www.pit-inn.com/sche_j.html

なんだかんだで新宿PIT INNに足を運ぶのは数年ぶり、いや10年ぶりくらいか。
かつて向かいにあったゲイバーはなくなっていたけど、まあ変わらずのピットイン。

チケット番号は83。整理番号順の入場なので、どうなるかと思ったが、ちょうど座席が満席になって立見になったタイミングだったかな。ちょっと残念だが、まあステージ真っ正面を最前列(といっても立見だけど)で聴けたので、まあよしとする。

ご両名とも、以前から聴き続けてはいるものの、ナマで聴くのはこれが初めて。
この新宿PIT INNでのデュオは、もうずいぶん前からの恒例イベントらしく、また二人ともすでに人気者なので、立ち見もほぼ満席。トータルで150人くらいか。

20時を過ぎてスタート。
どんな演奏なんだろうか? と思いきや、初っぱなからガチでフリーのインプロ。いきなり耳に突き刺さるノイジーな音で、「やるなぁ」という感じ。と思ったら、菊地さんがサックスを置いてステージのピアノに移動し、なんとピアノ弾いてる! 器用なんだなぁ。山下洋輔ばりに左ヒジで鍵盤叩きながら弾いてるし、なかなか絵になる。大友さんはエレキギターのほか、アコギにバンジョーまで取っ替え引っ替え。

お互いに「大友っち」「ナルちゃん」と呼び合う間柄だからなのか、二人の息がよくあっていることが伝わって来る。インプロの応酬ではあるけれど、その中に聴いたことがある曲(ボサノバ(ジョビンの曲?)やクリスマスの定番(バッハかな))がチラホラ出てくるのも楽しい。2ndセットでは菊地さんはスキャット・ボーカルも披露してたな。

1stセットの演奏ではせめていたけど、2ndセットでは一転して途中のトークで盛り上がる。髪の毛ネタのほか、海外ツアーで大友さんが挑発してきた客にブチ切れて一触即発になった場面とか、その時はさぞシリアスだったろうシーンを突き放したように語る菊地さんの話ぶりが可笑しい。このあたり、じつにウマい。

アンコールも含めて、なんだかんだで終わってみれば23時前。
意外にも、と言ってはなんだけど、サービス精神にあふれた二人のデュオを満喫した感じ。これは確かにクセになるかも。



by t-mkM | 2018-12-27 01:02 | Trackback | Comments(0)

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』にうなる

いまさらなんだけど、自宅のDVDで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を観た。

何のきっかけだったか、TBSラジオで番組を持っているライムスターの宇多丸(映画公開当時は週末の夜にやっていたが、現在はウィークデイの夜)による、大絶賛しているポッドキャストを聞いたから。
「映画史に残る」とか、「5億点」とか、とにかくテンション高く語っていて、どれも頷けるところが多いので、ツタヤでDVD借りてきた、と言うわけ。
(ちなみに、宇多丸がラジオで語る映画評は、早口でまくしたてるような語り口とは裏腹に、とてもロジカルで意外と聞きやすく、映画の背景事情なども含めて参考になる。なお、映画を見てから聞くのが、腑に落ちることが多いので、観る前は一部に留めておくのがいいかも。ただ、観る前に聞いても、興を削がれることはないと思う。その辺はさすが)

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』監督:ジョージ・ミラー 120分 2015年公開

以下は映画.com にある解説から。
https://eiga.com/movie/78097/

荒廃した近未来を舞台に妻子を殺された男マックスの復讐劇を描いた「マッドマックス」(1979)のシリーズ第4作。85年の「マッドマックス サンダードーム」以来30年ぶりの新作となり、監督・脚本は過去3作同様にジョージ・ミラーが担当。過去3作でメル・ギブソンが扮した主人公マックスを、新たに「ダークナイト ライジング」「インセプション」のトム・ハーディが演じた。資源が枯渇し、法も秩序も崩壊した世界。愛する者を奪われ、荒野をさまようマックスは、砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョーの軍団に捕らえられる。そこへジョー配下の女戦士フュリオサらが現れ、マックスはジョーへの反乱を計画する彼らと力をあわせ、自由への逃走を開始する。フュリオサ役でシャーリーズ・セロンが共演。第88回アカデミー賞では作品賞、監督賞ほか10部門でノミネートを受け、編集、美術、衣装デザイン、音響編集、録音、メイクアップ&ヘアスタイリングの合計6部門で受賞を果たし、同年度では受賞数最多作品となった。

ワタクシ、『マッドマックス』1作目にはリアルタイムでその話題に触れ、観ている世代なんだけど、なんせはるか昔で、記憶は遠い彼方。できるなら、おさらいしてから観るのがよかったか。
最初から荒涼たる世界が広がっているのは変わってないけど、そのグレードアップした映像や音響のせいか、始まって30分くらいは、なんというのか、その映像世界に慣れるまでボーゼンと画面を眺めていたというのが正直なところ。

とにかくセリフが極端に少ないし、説明的なセリフは一切無い。ほとんどの場面はクルマ(といっても派手に改造され、ボンネットに目障りなターボチャージャー載っけてる、燃費悪そうなモノ)が走りながら展開していく。そして、ストーリーめいたものもほぼ無くて、いろいろなことが起こるけど、まあ簡単にまとめれば「行って帰ってくる」だけである。

なんだけど、セリフではなく映像で語る、その画面に込められた情報量の多さはハンパなく、中盤で描かれる夜のシーンと昼間とのコントラストなど、描かれる内容とは異なり、映像自体は見事で美しいとさえ言える。音楽も然り。
映画が進むにつれて、その構築された世界観というのが見えてきて、最後には泣ける。いやもう、圧倒された、というほかない。

すでに、いろんなところで様々な人々が語っているので、いまさらこの辺境ブログで付け加えるところはないんだけど、ネットを見ていると、監督のジョージ・ミラーが語る「怒りのデス・ロード」の世界観の背景など、興味のわくエピソードがいくつも転がっている。

この映画こそ、映画館で観たいし、当時「爆音上映」がしきりに行われていたワケが、映画を観た今ならよく分かる。
どこかでリバイバル上映しないかなぁ。



by t-mkM | 2018-12-21 01:11 | Trackback | Comments(0)

失うことをめぐって

最近の雑誌から。

みすず書店のPR誌である『月刊みすず』2018年11月号を開くと、「精神分析家、鮨屋で考える」という、精神分析家で精神科医でもある藤山直樹の連載がある。この号には連載2回目で、「失うことをめぐってーー生いくらを食べながら」と題した一文が載っている。

生のいくらって、果たして食べたことがあるのかと振り返ると、正直、そこまで気にしたことはなかったか。今度は気をつけて食べてみよう。
で、目に止まった文章があったので、以下にメモしておく。

 最近鮨屋でときどき嫌な気持ちになるのは、握って置かれた鮨を写真に撮る客が多いことだ。なかには置かれた鮨を動かして、角度を変えて撮ったり、何度も何度も撮ったりする人もいる。そんなことをする暇があったら食べろ、と言いたくなる。もちろん、話に夢中になって鮨を置きっぱなしにしている客にも苛立つ。(…中略…)しかし、そういう客は、鮨のことを失念しているだけだからまだ許せる。写真を撮る人たちは違う。鮨に注目しながら、その鮨を食べるという本質的な体験を放棄して、その体験を「忘れたくない」ということにかかずらっている。倒錯的と言わざるをえない。

 そもそも鮨は握られて三十秒で確実に味が変わる。これは私が何度も確かめたことだから間違いない。ネタの温度と酢飯の温度のバランス、ネタ表面の湿り、そうしたものが変わるだけで、確実に鮨を食う体験の醍醐味は失われる。

 素晴らしい体験を失いたくないばかりに、いちばん素晴らしい体験を享受することを放棄して、体験した「かのように」その記録だけを死蔵し蓄積する。これが人間の性(さが)なのかもしれない。それくらい、人間は失いたくないのだ。失っていないと思うためなら、得なくてもよいのだ。
(以上、p22)


ちなみに同じ号には、やはり精神科医の松本俊彦による連載「依存症、かえられるもの/かえられないもの 3」もあって、こちらは要約して紹介するのがちょっと難儀なんだけど、とても興味深かった。
本論は実際に読んでもらうとして、最後にあったエピソード的な段落だけを以下に。

 生きのびるための不健康。しかし、それは何かの依存症を抱える人だけのものではないのかもしれないと思う。一見すると健康そうに日々のルーチンを生きている人たちのなかにも、ささやかな不健康や痛みでバランスをとっている人は少なくないのではなかろうか。この文章の締めくくりにそんな言葉を打ち込みながら、私はふと、ついさっきたまたま立ち寄った蕎麦屋で隣席に座った、疲弊したサラリーマン風中年男性のことを思い出すのだーー正確にいえば、彼が食べていたもののことを。そう、「もはや味ではなく痛みしか感じないのではないか」と心配になるほど、蕎麦を覆い尽くすほど大量に振りかけられた唐辛子の真っ赤な色を。
(p43)



by t-mkM | 2018-12-07 01:11 | Trackback | Comments(0)