沢崎シリーズ14年ぶりの新作を読んで

今年最初のエントリでも「原尞の新作が出る!」と驚いたことを書いた。
https://tmasasa.exblog.jp/27967417/
最近、なんだか知らないけど、相方がとつぜん買ってきて読み、どうもイマイチそうな感じなので、「どれどれ」と手を伸ばしてみた。

『それまでの明日』原尞(早川書房、2018)

以下は早川書房のサイトにあるあらすじから。

私立探偵・沢崎のもとを訪れた紳士が持ち込んだのはごく簡単な身辺調査のはずだった。しかし当の依頼人が忽然と姿を消し、沢崎はいつしか金融絡みの事件の渦中に。14年もの歳月をかけて遂に完成したチャンドラーの『ロング・グッドバイ』に比肩する畢生の大作。

今回、沢崎が巻き込まれる事件自体は、ハッキリ言ってショボい。
デビュー作の都知事選に絡む疑惑や、『私が殺した少女』の緊迫感に比べると、年齢のせいか、はたまた世相の反映なのか、もやもやした感が後半になるほどつきまとう感じがする。

そもそも、依頼人の持ち込んだ身辺調査は、わりとすぐに「当人がすでに死亡」となってしまうし、巻き込まれる金融絡みの事件も、金額はちょっと大きいものの、背後にうごめく組織や人物は、過去シリーズの登場人物を出すため? という感がなくもない。しかも、舞台となる金融会社の店名が「ミレニアム・ファイナンス」(!)だとか、沢崎が、いつまでも学生気分の抜けない息子のような年齢の人物と交わすやりとりでも、なんだかなぁ、という違和感を拭いきれない。

…といったような感じで、いまひとつすっきりしなかったのだけど、BOOK.asahi.comに永江朗が寄せていた書評などを読んでいて、そんな認識を改めさせられた気がした。

 探偵小説は失ったものを見つけ出そうとする物語である。この作品は、依頼された調査の結果はすぐわかるが(女将の死)、依頼人が姿を消すことで、何を見つけ出すべきかがわからなくなる。まるで現代人そのもの。

http://book.asahi.com/reviews/column/2018032700002.html


ほう、なるほど。
今作の、なんだか明確ではないストーリー展開、スッキリしない事件の顛末、自身の身近な人間関係に翻弄されたり、悩んだりする人々…。たしかに行き先が見えづらい。そういう点では、まさに現代的なのかもしれない。

最後の最後、「えっ」というラストで終わるのだけど、どうしたって、その後の(しかも確実に悲劇的であろう)展開を想像せざるを得ない。
このあと、沢崎シリーズはいかなる方向に行くのか? そもそも、新作は読めるのか?
ぜひとも読んでみたいと思うのだけど。


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# by t-mkM | 2018-04-24 01:33 | Trackback | Comments(0)

『ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男』

週末、またも朝からミッドタウン日比谷に行って、映画鑑賞。
公開前からちょっと気になっていて、実際、ゲイリー・オールドマンのアカデミー主演男優賞や、日本人が特殊メイクで受賞したことでも話題になった。

以下、「フィルマークス」というサイトからのあらすじを引いておく。

第二次世界大戦初期、ナチスドイツの勢力が拡大し、フランスは陥落間近、英国にも侵略の脅威が迫っていた。連合軍がダンケルクの海岸で窮地に追い込まれる中、ヨーロッパの運命は新たに就任したばかりの英国首相ウィンストン・チャーチルの手に。ヒトラーとの和平交渉か、徹底抗戦かー。チャーチルは究極の選択を迫られる。議会の嫌われものだったチャーチルは、いかに世界の歴史を変えたのか。実話を元に、チャーチルの首相就任からダンケルクの戦いまでの知られざる4週間を描く感動の歴史エンターテインメント。

https://filmarks.com/movies/72789

上にもあるけど、描かれるのは老齢で新首相となったチャーチルが、戦時中の挙国一致内閣を率いつつ、閣内の政敵である外相・ハリファックスや前首相・チェンバレンらによるドイツ・ヒトラーとの講和を勧める提案を、悩んだあげく退け、ドイツとの徹底抗戦を議会で決するまでの4週間。これ以外、チャーチルの直近の過去なども、セリフでは出てくるものの、説明的な画像など一切画面には出てこない。
まさしく、原題である「DARKEST HOUR」(最も暗い時間)に限定して、そして首相・チャーチルに焦点を絞って描かれる。

この件の歴史的な事柄は、現代史に属することだし、中高生のときの授業でもやった憶えもあまりなく、詳しくは知らない。
それにしても、クリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』を観てもつくづく思い知らされたけど、当時、ドイツ軍の破竹の勢いは、英仏連合国を瀬戸際まで追い詰めていたんだなぁ。副題にある「世界を救った男」は、ちょっとどうかとは思うものの、「連合国側がドイツと講和してしまった第2次大戦後の世界」というのも、十分に可能性があったんだな、と感じざるを得ない。

(以下、ややネタバレします)

後半、自身の決断を迷うチャーチルが、市民の声を聞く場面があるんだけど、(ちょっとできすぎだとしても)その場の市民全員がドイツとの講和に対して「ネバー!」と叫び、ドイツとの徹底抗戦を支持するシーンが印象的だった。
歴史の結果を知っている我々の立場からは、感動的に映るんだけど(実際に泣けてくる場面なんだが)、ふり返って現在の日本や世界の状況を思うと、そう単純に感動している場合ではないよなぁ、と複雑な思いにかられる。

それに、アジアの辺境に身を置く立場としては、徹底抗戦して戦後を主導した英仏(そういう意味で米はちょっと違うか)に対し、徹底抗戦した結果として敵国の占領から戦後が始まった我が国、という対比は、どうしてもよぎる。

…とはいえ、当時を再現する美術や細やかな演出、陰影の深い映像、そしてなにより、主人公をはじめ役者陣の演技に見応えがある(中途、やや眠くなったりしたが)。
「なぜいまチャーチル?」とも感じるけど、いろんな意味合いで、これも今どきの映画なんだと思わされた。


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# by t-mkM | 2018-04-19 01:12 | Trackback | Comments(0)

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を観た

先の日曜日、都心に新しくオープンした商業施設、東京ミッドタウン日比谷に入っているTOHOシネマで観てきた。
以下は「Movie Walker」に載っているあらすじ。

1971年。ベトナム戦争が泥沼化、アメリカ国民の間には疑問や反戦の気運が高まっていた。そんななか、アメリカ国防総省がベトナム戦争に関する経過や分析を記録したトップシークレットである文書、通称“ペンタゴン・ペーパーズ”の存在をNYタイムズがスクープ。しかし、その後の記事は政府の圧力で差し止められてしまう。アメリカ初の女性新聞発行人として足固めをしようとしていたワシントン・ポストのキャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は、同紙の編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)らとともに、真実を明らかにすべく奔走。ライバル紙であるNYタイムズと時に争いながらも連携、団結していくが、政府からの圧力はますます強くなり……。
https://movie.walkerplus.com/mv64145/

ミッドタウン日比谷ではおそらく一番大きな劇場と思われるスクリーン1にて鑑賞。
このTOHOシネマ、"プレミアム何たら"というのをやたら連発して宣伝しているんだけど、階段状の劇場はかなり広く、天井も高く、画面もデカくて、ほぼ一番後方の席で観たものの、画面が小さいと感じることもなかった。今どき、新しくできる映画館ほど、居心地(観心地か)がいいなぁ。

スピルバーグ監督、主演がメリル・ストリープにトム・ハンクス、でもってテーマがベトナム戦争絡み、となるとアカデミー賞最有力かと思いきや、今回はいくつもの各賞でノミネートされたものの、受賞には至らなかったようである。

で、本作。
なんでも9ヶ月くらいで制作されたようだけど、これだけの陣容を揃え、エンタメとして見応えのある作品を突貫で作ってしまえる、ハリウッドの底力というのはスゴいの一言。
予告編を見ていると、そう面白そうには感じられなかったのだけど、そんなことはまったくの杞憂。
主演の二人の演技はもちろんのこと、導入部分のベトナムにおける戦闘シーンから70年代はじめの新聞社の(ネットも携帯電話もなく、紫煙がただよう)内部のリアルさ、ワシントン・ポストの編集部の一癖ある面々、最後に出てくる輪転機のこれでもか! というリアルな再現などなど、画面の隅々にまで計算が行き届き、ラストの盛り上がりには胸にせまるものがある。

編集主幹のベンが言う「報道を守るのは、報道だけだ(趣旨)」など、本作のあちこちで言われるセリフからも、スピルバーグのメッセージはストレートで明確だ。それほど明快な主張を、役者の演技と細部まで配慮された演出や画面構成、そして脚本によりエンタメとして見せるのには、ただただ感服。強烈に皮肉の効いたラストの場面ともあいまって、強く印象に残った。

アクションシーンこそないけれど、大画面の劇場に身を委ねて観るべき映画、だな。


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# by t-mkM | 2018-04-12 01:05 | Trackback | Comments(0)

水族館劇場 新宿・花園神社公演『望郷オルフェ ー来るべき追憶の後にー』

すでに前半の公演は終わり、明日12日から後半で、連続7日間の公演。
前売りチケットは観劇前日まで販売、とのこと。
以下、とりあえず劇団サイトから貼っておく。

【公演情報】

望郷オルフェ ー来るべき追憶の後にー 


▼公演日時
4月5(木)6(金)7(土)8(日)9(月)
12(木)13(金)14(土)15(日)
16(月)17(火)18(水)

新宿 花園神社 境內特設野外儛臺 星の筏

全公演 夜7時 劇場外顔見卋(プロローグ)スタート  

全席自由期日指定 
上演時間 約130分

▼会場
新宿 花園神社 境內特設野外儛臺 星の筏

住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿5丁目17−3


▼木戸銭
前売券  4500円  観覧日前日まで下記前売券販売所で購入できます。

電話予約 4800円  4/4まで受付。☎080-2339-5615

当日券  5000円  中高生割引券 3000円 観劇当日午後5時より劇場窓口で発売。

※公演はすべて期日指定の自由席です。当日券も若干ご用意しますが、入場制限する場合もございます。確実な前売券をお奨めいたします。

詳細は以下の劇団サイトを。
http://suizokukangekijou.com/information/2018_hanazono.html


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# by t-mkM | 2018-04-11 01:10 | Trackback | Comments(0)

ブント・リーダーの新たなる評伝

よく行く図書館の新刊コーナーで、偶然、目に止まったので借り出して読んでみた。

『評伝 島成郎』佐藤幹夫(筑摩書房、2018)

以下はアマゾンの内容紹介から。

ブント書記長として六〇年安保で一敗地にまみれた島成郎が、次に向かったのは沖縄だった。一精神科医として政治を封印し、逆境の中で地域精神医療を一心に粘り強く担った島成郎。それはまさに“敵”の本丸に向かって攻め込む闘いの人生そのものだった。霧に閉ざされていた彼の後半生、もうひとつの闘いを、圧倒的な取材をもとに描く書下ろし評伝。

60年安保闘争を主導したブント(共産主義者同盟)のリーダーで、"アンポ"敗北後は大学に戻って精神科医となって沖縄へ行った…、という程度はなんとなく知ってはいた。そうは言っても、"すでに過去の人だろう"と思っていた「島成郎」だけど、彼の生涯をトータルにふり返るこの著作を読むと、著者の多大なる熱量もあってか、意外なほど「現在」にも通じる問題意識と射程の広さ、長さが印象に残る。かなり骨太の著作ではあるけど、読み応えがあった。

冒頭、共産党と決別してブントを立ち上げたにも関わらず、その共産党の幹部であった瀬長亀次郎との隠れた交流が、いくつかの傍証から推測されるのには驚かされた。また後半、若手の精神科医として沖縄に渡ってからの活躍が、島と交流のあったさまざまな立場の方の証言から再構成されていくのだが、生涯にわたり「人に出会い、集めて組織し、何ごとかをやり、後続に影響を与えていく」という感じ。ブント時代のオルグを思わせる。

新刊なので、まだ書評などがほとんど出ていないけど、ググってみると毎日新聞の記事が上がっていた。その記事の最後に、こんなことが書いてある。

 歴史的に見て、ブントを源流の一つとする新左翼の思想・運動は、ひとくくりにできない複雑な要素をもつ。一方の極には内ゲバやテロなどの凄惨(せいさん)な事件があり、暗部を消し去ることはできない。しかし別の面では、草の根から社会の矛盾を問う地道な活動の担い手も生み出してきた。本書が描く島の軌跡は、その前向きな面を示す象徴的な事例と感じられる。

毎日新聞 2018年3月12日 東京夕刊
https://mainichi.jp/articles/20180312/dde/014/040/005000c

「その前向きな面を示す象徴的な事例」とあるけど、島が精神科医として沖縄に渡り、その地域に根ざし、(大きく言えば)日本における精神科医療に対して戦いを挑んだ記録とも、本書は読めるだろうか。
島が亡くなってから18年近く。汲み取るべき「遺産」は意外にも深くて大きい、と感じた。


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# by t-mkM | 2018-04-05 00:55 | Trackback | Comments(0)

『素敵なダイナマイトスキャンダル』を観た

年度末、あれよという間に桜も満開。…を通り過ぎてしまい、すでに花びらの陰に葉っぱがちらほら見えるくらい。もはや花見はこの週末で終わりか。

今週は初っぱなから職場での移転作業があり、居室以外で受け持っている部屋もあるために、いやはやもう大変。とりわけここ数日は、移転荷物の置き場所の細かい指示などで移転担当の業者に付き合っていなくてはならず、まったく仕事にならない。昨日、移転先の居室の片付けもようやく一段落して、ようやく仕事を再開したところ。

その間、週末には映画を2、3本観たのものの、時間がないため感想を書けてなかったのだが、先週末に観た『素敵なダイナマイトスキャンダル』は、それなりに面白かった。
以下、シネマトゥデイの見どころから。

雑誌「ウイークエンドスーパー」「写真時代」などの編集長として知られる末井昭の自伝的エッセイを映画化。幼少期に母親が自殺するという衝撃的な体験をした末井が、伝説の雑誌編集長として活躍するまでの波乱の半生を描く。昭和のサブカルチャーをけん引したカリスマを、柄本佑が体現。『パビリオン山椒魚』などの冨永昌敬が監督を務め、音楽を冨永監督と『パンドラの匣』などでタッグを組んだ菊地成孔が手掛ける。

映画は、末井氏が子どもの頃、1950年代から60年代、80年代のバブル期から平成までが描かれる。冒頭、70年代の喫茶店での描写が出てくるんだけど、タバコの煙で店内が煙って向こうが霞んでいるところなど、当時の雰囲気がじつに濃厚に再現されていて、この"昭和感"は、当時を知っている身としては、じつに興味深かった。

なんといっても、主演の柄本佑がいい。
現実の末井氏に似ているらしいが、高校卒業後に都会へ出て、あっちこっちと仕事を変わりながらも、雑誌業界で頭角を現していくさまを、私生活の変化やバブル期の狂騒も交えながら、好演している。当時、目論みもなく都会に出て、偶然にも恵まれて仕事を得ていった若者というのは、大勢いたんだろうなぁ。いまとなっては「何にも考えてないよな」とも感じるけど、この変化こそが、デフレが20年以上続いた弊害でもあるのでは、と思わされる。
一方、幼少期に母親がダイナマイトで爆死するという体験を抱えている故なのか、所々で投げやりというか虚無とでもいえばいいか、そんな印象を感じさせる側面も覗かせ、末井昭という人物の奥底に何があるのか? といったものを感じさせもする。

観たのはテアトル新宿。
客層としては中高年が中心で、男性が多い。ま、エロ雑誌編集者が主人公なんだから、それも当然か。
ただまあ、この映画については、60年代、70年代で"新宿"というエリアが持っていた独特の雰囲気が、より感じられるところはあるかも。

ということで、観るなら新宿がオススメ。


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# by t-mkM | 2018-03-29 01:21 | Trackback | Comments(0)

久しぶりの下北沢で椿組『毒おんな』を観る

先週末、ひさしぶりに下北沢へ。
数年ぶり? いやもっと? とにかく、久々である。小田急が地下化してからは駅を降りるのは初めて。

それにしても、駅はすっかり様変わりしたものの、街の感じは以前と変わらない印象。個人経営のような小さな店が、入りくんだ通りに並んでいる。「「ニーチェの馬」なんていうのが店名になるなんて、シモキタくらいでは?」とは同行者の弁。
で、この日、スズナリで椿組の舞台を観るために来たのである。偶然にも、知り合いのM夫妻らと同じ日、同じ回で舞台を観ることに。

椿組2018年春公演
『毒おんな』
作:青木豪 演出:高橋正徳(文学座)
2018年3月2日(金)~14日(水)18ステージ 下北沢ザ・スズナリ

それにしても、キョン^2だ。つい最近でもTVドラマで見ていた、あの小泉今日子が椿組の舞台、それも200人超の小劇場クラスの舞台に出るとは。いやもう、ただ驚きである。

会場は200人も入れば満席のキャパで、そこに補助イスまで出て超満席。今回、相方がいち早くネットで申し込んだせいか、舞台から自由席を経て一番前の座席で観ることに。

舞台は北海道の酪農農家。旅館?も営んではいるものの、一族経営の零細で、ボケた親を抱える酪農家夫婦と従業員、獣医や近所の居酒屋店主など、酪農家をとりまく人々も出てくる。その夫婦の叔父で輸入食材店を手がける役が、椿組の主宰者・外波山さん。今回、この外波山さんがなかなかいい味出していたのが印象的。小泉今日子とも、「老いらくの恋」で絡んでくる。

それにしても、小泉今日子!いやー、もう感服いたしました。
決して目立つというわけではない。けど、まとう空気が違っている、とでも言うか。
「オーラ」なんていうコトバは使いたくないけど、外波山さんはじめ、椿組の役者陣や客演の二人など、皆それぞれにウマいし熱演なんだが、明らかにほかの皆さんとは一線を画す何かが、キョン^2にはあった。手練手管を駆使して男たちをダマし、金を出させ、密かに消えていく…。そんな不気味でミステリアスな役どころを、物語の進展にあわせ、微妙に印象を変えながら演じる。舞台女優として十二分に存在感が感じられた。しかも、ラストの至っての展開がこれまたブラックなこと。

アイドル時代から芸能界で一線を張ってきたからなのか、それとも自身の鍛錬のたまものか、その辺は分からないけど、役者・小泉今日子のスゴさを、最前線の客席で堪能した2時間であった。


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# by t-mkM | 2018-03-13 01:55 | Trackback | Comments(0)

一気に読んだ『夜の谷を行く』

以前、『文藝春秋』で連載が始まったことを知り、単行本にまとまったことから図書館にリクエストし、忘れた頃にようやく順番が回ってきた。
で、さっそく読んでみた。

『夜の谷を行く』桐野夏生(文藝春秋、2017)

なんと言ったらいいか、いやーな感じが満載なんだけど、引き込まれて一気に読んだ。面白い。
「桐野夏生って、こんなに読みやすかった?」と感じるほど、リーダビリティが高い。前に読んだ東日本大震災を題材に取った『バラカ』は、手を広げすぎて中途半端な印象を受けたけど、こちらは特定のテーマを集中し、読んでいる途中でも、さまざまな思いがアタマの中を行ったり来たり。今回は、桐野夏生にやられた感がある。

以下はアマゾンの内容紹介から。長いけど、貼っておく。

連合赤軍がひき起こした「あさま山荘」事件から四十年余。
その直前、山岳地帯で行なわれた「総括」と称する内部メンバー同士での批判により、12名がリンチで死亡した。
西田啓子は「総括」から逃げ出してきた一人だった。
親戚からはつまはじきにされ、両親は早くに亡くなり、いまはスポーツジムに通いながら、一人で細々と暮している。かろうじて妹の和子と、その娘・佳絵と交流はあるが、佳絵には過去を告げていない。
そんな中、元連合赤軍のメンバー・熊谷千代治から突然連絡がくる。時を同じくして、元連合赤軍最高幹部の永田洋子死刑囚が死亡したとニュースが流れる。
過去と決別したはずだった啓子だが、佳絵の結婚を機に逮捕されたことを告げ、関係がぎくしゃくし始める。さらには、結婚式をする予定のサイパンに、過去に起こした罪で逮捕される可能性があり、行けないことが発覚する。過去の恋人・久間伸郎や、連合赤軍について調べているライター・古市洋造から連絡があり、啓子は過去と直面せずにはいられなくなる。
いま明かされる「山岳ベース」で起こった出来事。「総括」とは何だったのか。集った女たちが夢見たものとは――。啓子は何を思い、何と戦っていたのか。
桐野夏生が挑む、「連合赤軍」の真実。


読み終わってみると、カバーの装幀が内容を象徴的に表している気がする。
赤黒の重く沈んだトーンの写真。写っているのは駅前とおぼしき駐輪場に停められた自転車の連なり。その真ん中に、白字で「夜の谷を行く」という詩的なタイトルが浮かんでいる。そのコントラストが、"俗な現在と遠い過去の封印してきた記憶"との対比のように感じられた。

作品では、主人公・啓子が、自身が関係した「山岳ベース事件」のことを、妹の娘である佳絵に話すシーンや、かつてその「山岳ベース」から一緒に脱走した昔の仲間を訪ねてのやりとりなど、小説の白眉とも言える会話シーンが印象に残る。何というか、いろんな意味で身につまされたとでもいうのか、ズッシリくる感じ。

ラストで衝撃の事実が明かされる。
これはまあ、エンタメとしてのオチとしては致し方ないのかもしれないけど、やや拍子抜けな感じがしないでもない。ただでも、このあと、啓子はどんな対応をするのだろうか? それを想像してみると、啓子がどういう行動を取るにせよ、過去が自分自身へ突きつけてくるものと対峙せざるを得ないことは明らか。

ちなみに、「山岳ベース事件」の詳細はウィキペディアにも載っているし、若松孝二監督の映画『実録・連合赤軍』でも描かれている。(関係するシーンは、画面を見てるのがツライけど…)映画を見てから読むと、時代背景も含めてよく分かるかも。ただその分、ぐったりする可能性も大きいだろうけど…。


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# by t-mkM | 2018-03-09 01:52 | Trackback | Comments(0)